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バトンパス


  東京オリンピックまで1年となり,メダルを狙える種目は何かをめぐる論議もかまびすしいこの頃である。私は,オリンピックの歴史で花形となるのは陸上競技だと思っているが,個人の力を競う種目であり,日本選手にはオリンピックの舞台で個人の力を競うには残念ながら限界があるようである。しかし,苦手な陸上競技にあっても,個人競技と団体競技を組み合わせた種目であるリレー種目,特に距離の短い男子400メートルリレーは,過去にメダルを取った実績がある上,来年のオリンピックでもメダルへの現実的な希望があり,期待を抱かせる。個人の走力をバトンパスという団体作業を介在させて繋ぎ合わせ,メダルを狙うのであるが,距離が短いとバトンパスが技術を要するようで,ここを訓練して円滑に行えると,個人の走力では到底敵わないはずの強豪国に勝つことができるという私には摩訶不思議に思える競技である。

 

 

 

 

  さて,これを理屈っぽい話しに転じて恐縮であるが,私は,職業人として最終盤にあるところ,わずかな訴訟事件や相談事件を処理する過程で,裁判官や相手方代理人と対峙するとき,どうにも受容しかねる違和感を覚えることが多い。むろん,その実は,若い時代にも経験した「見解の相違」として処理される事象と大差ないものが,現役舞台からの退場を促されている今,個人的に覚える寂しさのようなものかもしれない。言い換えれば,時代が,「先輩,お先に失礼します」と自分を追い越して行くのを実感する寂寥感のようなものかもしれない。しかしながら,そう思う一方で,「おう,ご苦労さん。どうぞ,頑張ってください」と応答するだけでは済ませられない,未消化な何かが残るのである。

 

 

 

 

  浅田次郎著の「黒書院の六兵衛」という小説(初出は日経新聞の連載小説)があるが,これは江戸城無血開城の架空の裏話しで,勝海舟が西郷隆盛に約束した江戸城無血明渡し期日が迫る中で,正体不明の幕府の忠臣に変身した徳川時代そのものが城内に居座って梃でも動かないため,無血開城の建前上切り殺すこともできず,これを追い出すのに翻弄されるという話しである。物語は,やがてその忠臣すなわち徳川時代が明治というか欧米近代に追い立てられ,遂に抗しきれず,席を譲るのを受け容れざるを得ないことを悟り,ある日従容として江戸城から立ち去っていく結末となるのであるが,そういう感覚に共感するところが私にあるのであろう。おそらく,かの徳川時代は,来るべき新時代に渡すべきバトンがあるのか,あるいは,渡したいバトンがきちんと渡されるのかを見極めようとして,我が居城であった江戸城内を彷徨ったのであろう。

 

 

 

 

  ところで,私は,上述のとおり,なお法律実務家としてわずかな件数ではあるけれど,民事紛争の代理人として地裁や家裁に出向いたり,相手方や関係者との折衝に当たったりして,苦労ばかりしている。その折,特に,裁判や調停の手続きの在り方に疑問を覚えることが少なくない。古い法曹の繰り言にすぎないといわれてしまうと,発言の気力も失せるのであるが,要するに,民事であれ家事であれ,司法手続は個別紛争の解決を目的としているはずであるのに,紛争を構成している核となる個別事情がきちんと把握されず,そこをあいまいにしたまま一般論ないし一般的基準で処理が急がれる傾向が顕著になっているように思われるのである。今日風に言い換えれば,AI裁判あるいはIT裁判への移行を急ぐ過程にあるともいえるであろうか。迅速性ばかりが強調され,司法手続における最上位の行為規範となり,紛争の個別性を軽視し,一般論で決着を図る傾向が強まっているのを否定できないように感じるのである。

 

 

 

 

  人間社会の営みは,いつの時代,いずれの分野であれ,旧時代から新時代へのバトンパスを繰り返して成り立っている。その結果が進歩,向上をもたらすか,停滞,破綻に至るか,いろいろであり,いずれもが繰り返されてきた。司法の分野においても,似たようなものであり,それゆえに個別の紛争の特性を正確に把握する審理を行い,判断をするという本来の司法手続をバトンに託して,これをきちんと次世代にパスしてほしいと願い,そのために自分にできることがあれば,残された微力を投じようと思っているところである。

 

 

 

M.M

更新日2019.6.18


梅雨が苦手



得意という方はあまりいらっしゃらない気もしますが,梅雨が苦手です。

 

 

外出時に濡れる,とか,物理的な嫌さももちろんあるのですが,何より,雨の日に眠くなる性質(単なる怠け者なのかと思っていたら,案外他にもいらっしゃるようです)のため,梅雨時は行動力が低下する感じがするのが辛いところです。

 

 

 

 

 

そもそも,私,水不足で有名な県(他にはうどんでも有名)出身でして,あまり雨が降らない地域なものですから,地元にいる時は梅雨に入ったというニュースを見ても実感を伴わないことがしばしばありました。

 

 

ところが,大学入学と同時に関東地方(北の方)に来てみて驚いたことには,梅雨に入ったら本当に雨が降るのです(当たり前)。以来,毎年梅雨に入る今ごろは憂うつな気持ちで過ごしております。

 

 

早く梅雨が明けないかなぁと,今からその日を心待ちにしているのですが,他方で昨今は夏の酷暑が厳しいですよね。梅雨が明けたら暑い,どうもこの季節は大変なことばかりだなぁと思いながら,何とかこの梅雨?夏も乗り切っていきたいと思う今日このごろです。
 

 

 

頼みの鰻も高いし,とかくに人の世は住みにくい,ですね

更新日2019.6.14


改正民法(債権法)の概要?連帯債務に関する見直し


1 連帯債務とは

 

 

 

  民法(債権法)改正により、連帯債務に関する規定が見直されました。

 

  連帯債務とは「債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担する」(改正民法第432条)場合における債務のことであり、具体的には、併存的債務引受があった場合の旧債務者と新債務者の債務などが連帯債務に該当すると言われています。親子ローンで借り入れをする場合の親の債務と子の債務も連帯債務とされることが多いです。

 

  例えば100万円の貸金債務について、債務者Aと債務者Bが存在し、この債務が連帯債務となる場合(以下この事例を前提に記載します。なお、AとBの負担部分は同一とします。)、債権者はAにもBにもそれぞれ全額100万円の請求をすることが可能となりますが、受領できる合計額は100万円であるという関係になります。連帯債務自体は触れる機会は少ないかもしれませんが、連帯保証において連帯債務の規定の一部が準用されています(改正民法第458条)。また、複数の連帯保証人が存在する場合における連帯保証人間の関係は(商法の適用などにより)連帯債務とされる可能性があります。

 

 

 

 

 

2 主な改正点

 

 

 

  連帯債務に関する規定の主たる改正点は、債務者Aに生じた事由が債務者Bにどう影響するかという点です。

 

  例えば、Aが債権者に100万円の債務のうち70万円を支払った場合、Bとの関係でも残債務額は30万円となります。つまり、Aが行った「弁済」という事由はBにも影響することになります。

 

  他の連帯債務者に影響する事由を「絶対的効力事由」、影響しない事由を「相対的効力事由」と呼びますが、現行民法においては原則として相対的効力事由であるとしつつ、1)請求、2)更改、3)相殺、4)免除、5)混同、6)消滅時効、は絶対的効力事由である旨の規定が存在し、この他、7)弁済(代物弁済・供託を含む)も絶対的効力事由であると考えられています。

 

  この点、改正民法においては、上記のうち1)請求、4)免除、6)消滅時効については、相対的効力事由とされています。

 

 

 

 

 

3 改正による具体的な影響

 

 

 

1)    請求

 

  「請求」の法律的な効力としては、期限の定めのない債務が履行遅滞になることと、時効中断が生じること、が挙げられます。期限の定めがない債務である場合において、現行民法ではAに対する請求をもって、請求を受けていないBも履行遅滞状態になりましたが、改正民法においてはBには影響しないことになります。これにより、遅延損害金の計算についてもAとBの起算点がずれる可能性があることになります。

 

 

2)   免除

 

  現行民法において債権者がAに対して債務免除をするとBにも影響してしまい、具体的には、債権者はBに対して50万円しか請求できなくなります。改正民法においてはAに対して債務免除をしてもBに対して100万円を請求できることに変わりはないことになります。この改正は、債権者の債権管理という意味では便利になったと言えるでしょう。Aの資力が乏しく、一定の金員の支払いをもって残債務を免除するといった交渉をするにあたっても、現行民法ではBへの影響を考慮しなければならなかったのですが、改正民法においては柔軟に対応できるようになります。

 

 

3)   消滅時効

 

  現行民法においてAについて消滅時効が完成してしまうと、これがBにも影響してしまい、具体的には、債権者はBに対して50万円しか請求できなくなります。改正民法においてはAについての消滅時効の完成はBに影響しませんので、免除と同様に債権者の債権管理の観点からは便利になります。Bに資力がある場合Bのみを窓口し、資力のないAを放置してしまうようなケースは実務上生じます。このような場合、資力のないAを放置したが故にAについて消滅時効が完成し、Bにまで影響してしまうという、債権者としては非常に歯痒い思いをする可能性があったので、債権者としてはAについても時効中断の措置を取り続ける必要がありました。改正民法においては債権管理のコストなどを勘案して柔軟に対応することができるようになると思われます。

 

 

 

 

 

4 最後に

 

 

 

  改正民法では当事者の意思によって絶対的効力事由、相対的効力事由の内容を変更できるとされていますので、契約書の条文によって上記の結論を修正することは可能です。民法改正に伴い連帯債務が関係する書面・契約書の見直しを検討する場合には、この点も考慮することになるでしょう。

 

 

 

(パートナー 弁護士 齊 藤 潤一郎)

更新日2019.6.14


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