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2024/10/10 キラキラネームと名乗り訓

自称しわしわネーム

子どもが通う保育施設では、各家庭の同意を得たうえでクラスメイトの名簿が配布されるのだが、名前の読み方と漢字が容易に一致しないというケースがある。

名前漢字の本来の読み方の一つではあっても、正しい読み方を教わらなければ誤読してしまいそうな個性的な名前や、(古い世代の感覚では)そもそも人名として聞き慣れないものも少なくない(事情により例示は控える)。

私の世代では、「〇子」「〇郎」「〇恵」「〇太」「〇美」「〇介」・・・といったある程度パターン化された名前が多かったような気がするのだが、最近は、人気の名前・漢字はありつつも、多様化し、個性的な名前が多くなったように感じる(かつてキラキラネームが騒がれた時期もあった。)。

しかし、実際のところ、今も昔も個性的な名前の出現率はさほど大きく変わっていないらしい。

日本では、古くから、人名において「名乗り訓(人名訓)」なる特殊な読み方が使われることが少なくなく、国立国会図書館のX(旧ツイッター)によれば、「源頼朝」の「朝」を「とも」、「比企能員」の「能員」を「よしかず」と読むのは、いずれも名乗り訓とされる(言われてみれば、一般的な訓読みではなさそうである)。

このような一般的な訓読みとは異なる読み方が人名として用いられ、一般化してきたというのが日本における名づけ(名乗り)の歴史らしい。

ところで、令和7年5月26日以降、戸籍法の一部改正を含む法律の施行等により、伝統的でない当て字などを用いた難読、奇抜な名前の総称である、いわゆるキラキラネームを新たに付けることは難しくなるといわれているようなのだが、その一方で、上記法律の付帯決議には「(前略)今後新しく生まれる名乗り訓の許容範囲を幅広く担保すること。」とある。

現時点では名乗り訓として一般的でなくとも、漢字のもつ意味との整合性や関連性が明らかに否定されるようなものでなければ、新たな読み方が生まれる可能性は十分に残されているということである。

法制審議会の資料や、上記法律成立後の法務省のパンフレットをみても、例外的に許容性が認められないものとしては、①漢字の持つ意味とは反対の意味による読み方(例:高をヒクシと読ませる)、②読み違い、書き違いかどうか判然としない読み方(例:太郎をジロウ、サブロウと読ませる)、③漢字の意味や読み方との関連性をおよそ又は全く認めることができない読み方(例:太郎をジョージ、マイケルと読ませる)など、社会を混乱させるものが列挙されており、明らかに許容し難いものに限定されるように思われる。

そうすると、上記法律は、厳密には、キラキラネームの一部を制限するものに止まるということであり(一部報道によれば、「騎士(ないと)」のように、外国語に関連があるものも認められる可能性が高いとのことである。)、時代の移り変わりとともに、かつてのキラキラネームが名乗り訓として一般化するということは十分にあり得よう。 ナウい名前も、数十年経てばしわしわネームになっていくのだから。