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2019/01/15 改正民法 ‐瑕疵担保責任の改正‐

弁護士 63期 横 山 裕 一

  民法改正については,これまでの小野総合通信でもいくつか取り上げられておりますが,今回は瑕疵担保責任を取り上げます。瑕疵担保責任については,特に効果の面において重要な改正がありますので,以下,現行法と照らし合わせながら概要をみていきます。




1.瑕疵担保責任という名称の廃止


  そもそも「瑕疵担保責任」とは,目的物に物的な不具合がある場合の売主の責任を表す用語として,現行法第570条の表題で用いられる法律用語でしたが,「瑕疵」という言葉がなじみの薄い文言であること,近年では環境的な欠陥も含まれると解されていることなどから,改正法ではこの文言が排除されました。改正法では,一般に「契約不適合責任」という名称で表されます。




2.要件


  契約不適合責任については,改正法第562条以下に規定があり,その要件は,目的物の「種類,品質又は数量に関して契約の内容に適合しない」ことです(改正法第562条第1項)。ただし,これは現行法にいう「隠れた瑕疵」(現行法第570条本文)という要件を大幅に変更するものではなく,むしろこれまでの判例法理などを踏まえ,実質的な判断基準を明確化したものといえます。

  なお,改正法には,現行法でいう「隠れた」(買主の善意・無過失を指すと解されております)の要件がありませんが,これは買主の主観を不問としたわけではなく,契約の内容に適合するかの判断にあたって,買主の認識も含めて総合的に検討するため,わざわざ設ける必要はないとされたためです。




3.効果


  次に,効果についてですが,現行法では,損害賠償請求と契約の解除のみが認めらますが(現行法第570条,第566条第1項。なお,解除については契約をした目的が達せられない場合に限ります),改正法では,目的物の修補,代替物の引渡し又は不足分の引渡しを求めることができるようになりました(追完請求権。改正法第562条第1項本文)。もっとも,売主は,買主に不相当な負担を求めるものでないときは,買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完ができます(同条第1項ただし書。例えば,買主が修補を求めた場合に,代替物を引き渡すことができます)。

  他方,現行法にて認められていた損害賠償請求については,追完請求権に対する二次的なものとして,売買代金の減額請求権という形で認められます。すなわち,目的物が契約に適合しない場合,まずは買主から追完の催告を行い,相当な期間が経過してもなお追完されない場合に,はじめて代金減額請求権が認められます(改正法第563条第1項。ただし,そもそも追完が不能であるときや,売主が追完を拒絶する意思を明確にしたときなど,一定の場合には催告は不要です。同条第2項)。なお,減額にかかる金額の算定方法や算定時期については,今後の解釈に委ねられます。

  このように,改正法では,1)まずは目的物の修補や代替物の引渡し等を認め,2)これらの履行がされない場合にはじめて代金減額請求を認めることとされており,この点は現行法から大きく変更されたところです。このほか,買主が別途損害を被った場合には,債務不履行の一般準則に従い,別途,損害賠償請求や契約の解除をすることが認められます(改正法第415条,第541条など)。




4.期間制限


  責任追及の期間制限ですが,現行法では,瑕疵の存在を知った時から1年以内に「請求」をしなければならなかったところ(現行法第570条,第566条第3項),改正法では,目的物の不適合を知った時から1年以内にその旨を「通知」すればよいことになりました(改正法第566条)。「請求」も「通知」も,不具合の内容や請求金額を具体的に明示する必要はないと解されているものの,改正法は不具合を知らせるだけでよいこととされましたので,一応,買主の負担が軽減されたことになります。

  ただし,この期間制限内に通知をした場合でも,別途,改正法における消滅時効の一般原則(改正法第166条以下)が適用されますので,注意が必要です。




5.まとめ


  以上のとおり,瑕疵担保責任(改正法にいう契約不適合責任)は,今回の民法改正で大きく変更されており,不動産取引などに日常的に関与される方は,早めに内容を整理しておくことが有用です。当事務所では,改正に備えた社員向けの研修や講演等にも対応しておりますので,それらをご希望される方はお気軽にお問い合わせください。