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2017/09/22 将棋AIについて

将棋好き

最近,至るところでAI(Artificial Intelligence)の進歩が取り上げられているが,将棋好き(ただし基本的には見る専門)の私にとっては, 少し前に現名人のタイトルを保持する佐藤天彦棋士がAIソフト「Ponanza」に二連敗したことがそれを如実に感じさせる出来事であった。


しかも,上記二連敗については,素人の私の目からみても,佐藤天彦名人が一方的に「Ponanza」に潰されており,正直,佐藤天彦名人以外のプロ棋士が挑戦者であったとしても同じ結果になることが容易にみてとれることが衝撃的であった(ちなみに,かつて全タイトルを同時に取得したこともあり,将棋界のスーパースターである羽生善治棋士は「Ponanza」への挑戦をかけたプロ棋士同士のトーナメントで,佐藤天彦名人に敗れており,羽生善治棋士が「Ponanza」に挑戦しても結果は大きく変わらなかった可能性が高く,悲しいところである)。


つい数年前までは,将棋はチェスなどと異なり,取った相手の駒を使用でき,選択肢が幅広いこともあり,将棋のAIがプロ棋士を脅かすのはまだかなり遠い未来であるといわれていたことを考えると,隔世の感がある。


ところで,プロ棋士が「Ponanza」に一方的に負かされた理由については複数あると思われるが,その一つとして,「Ponanza」は単に従前のプロ棋士の棋譜を暗記し,その中から最善手を導くのみならず,「Ponanza」同士の対決等の機械学習により,既存の定跡とは異なる新たな手筋を指すことが挙げられている。そして,最近では,そのような「Ponanza」などのAIが示す手筋に着想を得て,将棋界でかつて流行したものの研究により弱点が顕わになり次第に廃れていった手筋が棋士の研究によって再び見直され,脚光を浴びるといったことも多い。


上記のような点を鑑みると,将棋に限らず,人間の錯覚や勘違いにより,活用可能性がないと思われていたものであっても,AIの分析によって実は有効な活用方法があることが発見され,それが人間の研究によって更なる発展に繋がる部分があるのではないかと思っている。その意味で,人間がAIに勝てない部分はあるにせよ,すべて悲観的になる必要はないのではないかと思っている今日この頃である。