2017/08/15 観光客はカモ?
功徳を積む男
今年も折返し地点を過ぎ,夏休みシーズンです。
私は一足早く7月に夏休みをとり,旅行をしてきました。
3年前にイタリア中南部を訪れて以来の再訪で,計画立案から航空券・ホテル・特急券の手配まで自分でする自由気ままな個人旅行です。
今年の目的地は,イタリア北部の三都市(ミラノ,フィレンツェ,ヴェネツィア)でした。
イタリアの主要都市にある旧市街は,街並みそのものが歴史や文化を感じさせてくれますし,どの都市に行っても,レオナルド・ダ・ヴィンチ,ミケランジェロ,ラファエロの三大巨匠や,名だたる巨匠の多数の名作を目にすることができ,これがイタリアを再訪しようと思わせてくれる魅力の一つです。
また,イタリアの観光地では,ほとんどの人が母国語だけでなく英語を操りますので,片言の英語と簡単なイタリア語,そして少しの度胸さえあれば,困ることはほとんどありません。
ただ,悲しいかな,イタリアをはじめとするヨーロッパでは,観光を楽しむと同時に,日本にいるときとは『全く異なるレベル』の警戒心を忘れてはいけません。
というのも,イタリアなどは,多くの観光客が集まるだけでなく,ジプシー,経済移民,様々な境遇の人々が入り乱れて経済格差も大きく,観光客をターゲットにした犯罪や犯罪まがいの行為を生業にしている人間がとても多いからです。
かくいう私も,かばんは体に固定して前に抱え,現金は分散して持ち,よく取り出す小銭入れには少額の現金だけを入れて革製のつなぎ紐をベルトに繋いでシャツで隠す,と一応の警戒はしていたのですが,1週間の滞在中,何度も悪意ある人たちに狙われるという経験をしました。
●集団で注意を逸らして1人が仕留めるスリ集団(遭遇可能性☆☆。最大☆3つ)
よくあるスリの手口といわれるのが,子供を騒がせたり,コインをばら撒いたり,警察官を装った仲間に職務質問をさせたりして,ターゲットの注意を逸らしている間に,実行犯がカバンなどからサイフを抜き取る,というスリです。
私がスリ集団に遭遇したのは,ピサの斜塔から最寄りのピサ中央駅まで向かうバスの車内でした。
ピサの斜塔から駅までは大分距離があり,観光客は皆バスに乗ります。そのため,そこがスリ集団にとって絶好の狩場になっていたのです。
そのような事情まで意識が及ばなかった私は,ほぼ満員のバスに最後に乗り込みました。
すると,すぐに4?5人の女の集団がバスの乗り口で運転手と口論を始めました。
バスの運転手は,強い口調で「チャオ!」と言い放ち追い払おうとしますが,女たちは一向に立ち去ろうとしません。運転手は無理やりドアを閉めようとしますが,ドアを閉めさせまいと,女たちは腕や体を突っ込んできます。
そんな状況で,その集団とはまったく別のところから走ってきた1人の女がバスに飛び乗ってきて私の近くに立ったのです。バスは満員のため,乗客を装った人間に近くに立たれてもそのこと自体おかしなことだと思わず,運転手たちの口論に意識が言っていた私は,小銭入れへの意識が薄れていました。
すると間もなく,私の後ろに立っていた妻が「あなたサイフ盗ったでしょ!」と叫びました。
ふとポケットに入れていた小銭入れに目をやると,ベルトに繋いでいたつなぎ紐から小銭入れが外され,無くなっていたのです。
その状況をみて,私も妻が叫んだ意味を理解し,横に立っていた女に詰め寄りました。
女は,盗った小銭入れを持った片手を自分のバッグの下に隠して10秒ほど抵抗しましたが,最後は小銭入れを床に落として「落ちているじゃないか」とアピールし,私がそれを拾った隙を突いて逃げて行きました。
取り戻した小銭入れの中身を確認すると,3枚入っていたはずの5ユーロ札が1枚になっていました・・・。
抵抗する10秒ほどの間に,片手で小銭入れのファスナーを開け,完全に空にならないよう(お金を盗っていないと弁解する余地を残せるよう)1枚の札だけを残して札を抜いたということなのでしょう。
もうここまでくると,その技術としたたかさに感心してしまいます。
●ミサンガや花の押し売り(遭遇可能性☆☆☆)
観光名所や広場によくいるのが,ミサンガや花の押し売りです。
過去にローマのポポロ広場で自称バングラデシュ人にミサンガの押し売りをされそうになった経験があったので,押し売りにも警戒していました。
しかし,今回は,ミラノの街中を歩き,観光客のような身ぎれいな男だったので,よくいる押し売りには見えなかったのです。
自称セネガル人のその男は,明るく「どこから来たの?」「日本は中田,稲本とか良い選手多かったよな」(選手のチョイスが古い・・・)と話しかけてきたかと思いきや,こちらの隙を見て,「友好の証」だと言いながら,私の手首にミサンガを巻いてきました。
私が要らないと言っても無理やり。やられました。
そして,私の手首にミサンガを巻き終わるや否や,すぐに右手の親指と人差し指を擦りながら,金を要求してきたのです。
私が「買った覚えはない」「警察に行くか?」と言うと,男は少し怯みましたが,「少額でいいから」と執拗に付きまとってきます。
1人なら走って逃げるところでしたが,周りには人もまばらで,妻が一緒だったということもあり,(せめてもの抵抗で,チップとしては極めて少額の)1ユーロコインを渡して足早に立ち去りました(他の人の経験談によれば,1人あたり数十ユーロ要求された人もいるとか・・・)。
男は不満そうな顔をしていたので,私が「警察」と言っていなかったら「ふざけるな」と怒っていたかもしれません。恐ろしや。
ちなみに,その直後にも,ミラノのスフォルツェスコ城の前で,ミサンガを手にぶら下げた別の男から話しかけられ,肩に手をかけられたのですが,先ほどやられたばかりの私は,その悔しさと苛立ちから怖いもの無しになっていたのかもしれません。その男の手を強く振り払って立ち去りました。
その男からは「クレイジー・・・」と呟かれましたが,こういう輩に遠慮は無用です。
●細い路地でのスリ(遭遇可能性☆☆)
ターゲットは妻で,妻が自分で気づいたため未遂に終わりましたが,ヴェネツィアでも,スリに遭遇しました(私なんかとは鋭さが違い,妻はスリにすぐ気づきます)。
地図のような紙切れで手元を隠しながらカバンに手をかけ,開けようとする手口です。
これもよくある手口です。
●署名・募金詐欺(遭遇可能性☆)
遭遇するまでその存在を知りませんでしたが,レオナルド・ダ・ヴィンチの壁画「最後の晩餐」で有名なミラノの教会の前で,麻薬撲滅の署名を呼びかけている男たちに日本語で話しかけられました。
その時点でかなり怪しかったのですが,差し出された署名簿には,日本語で書かれた日本人の名前と金額がズラリ。これは募金詐欺だと思い,その場を立ち去りました。
日本人ばかり狙っているのでしょうね。後日インターネットで検索すると,署名後に募金を執拗に迫られたという体験談が出てきました。
<最後に>
スリや押し売りといった行為が多発する背景には,経済格差などの問題があるのかもしれませんが,そうかといって私たちも黙って被害に遭うわけにはいきません。
海外旅行(特にヨーロッパ旅行)をする方には,せっかくの旅行に水を差さないためにも,警戒を怠らず,被害に遭ったときの損害を最小限にするための心構えや準備をしておくことをお勧めします。
それでも被害に遭ってしまったときは,『功徳』だと自分に言い聞かせて気持ちを落ち着かせましょう。