弁護士法人 小野総合法律事務所 ONO SOGO LEGAL PROFESSION CORPORATION

ブログBLOG

2017/04/17 職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント・・・・・・・・・

弁護士 63期 田 村   圭

 職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策が義務付けられました

1 改正法のポイント


事業主による妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする不利益取扱いは,これまでも法令違反とされていましたが,改正男女雇用機会均等法及び改正育児・介護休業法の施行により,平成29年1月1日から,上司・同僚が,妊娠・出産や育児休業・介護休業等に関する言動により,妊娠・出産等した女性労働者や育児休業・介護休業等の申出・取得者等の就業環境を害することがないよう,事業主として防止措置を構じることが新たに義務付けられました(男女雇用機会均等法11条の2,育児・介護休業法25条)。





2 事業主が講ずべき措置


  職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントを防止するために事業主が雇用管理上講ずべき措置として,厚生労働大臣の指針(平成28年厚生労働省告示第312号,平成21年厚生労働省告示第509号等)は,次のような事項を示しています。なお,派遣労働者に対しては,派遣元のみならず,派遣先事業主も措置を講じなければならないことにご注意ください。

(1) 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの内容,ハラスメントがあってはならない旨の事業主の方針,ハラスメントに係る言動を行った者については,厳正に対処する旨の方針・対処の内容等を就業規則等の文書に規定し,管理・監督者を含む労働者に周知・啓発することが求められます。

(2) 相談(苦情を含む)に応じ,適切に対応するために必要な体制の整備

相談窓口を定め,相談窓口の担当者が,その内容や状況に応じ適切に対応できるようにする(あらかじめ留意点等を記載したマニュアルを作成する)等の措置を講ずることが求められます。職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントは,セクシュアルハラスメント等と複合的に生じることも想定されますので,あらゆるハラスメントの相談について一元的に応じることのできる体制を整備することが望ましいとされています。

(3) 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

事実関係を迅速かつ正確に確認すること,事実確認ができた場合には,速やかに被害者に対する配慮の措置及び行為者に対する措置を適正に行うこと,事実の有無にかかわらず再発防止に向けた措置を講ずることが求められます。セクシュアルハラスメントについては,性的な言動があったことが事実関係の確認で重要となってくるのに対し,妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントは,関連する言動があったことだけをもってハラスメントと判断するのが難しい場合があります。業務上の必要性や,その言動の前後関係も含めて判断する必要がある点に留意する必要があります。

(4) 職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置

業務体制の整備など,事業主や妊娠等した労働者その他の労働者の実情に応じ,必要な措置を講ずることが求められます。また,妊娠等した労働者の側においても,制度等の利用ができるという知識を持つことや,周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の体調等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つこと等を,妊娠等した労働者に周知・啓発することが望ましいとされています。

(5) (1)から(4)までの措置と併せて講ずべき措置

相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ,周知することが求められます。さらに,相談したこと,事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め,労働者に周知・啓発することが求められます。





3 最後に


各企業では,これまでに,セクシュアルハラスメントについて様々な防止措置を講じてきた経験があると思います。今後は,この経験を活かしつつ,今回の法改正に対応して,妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについても必要な措置を講じ,労働者が働きやすい環境を実現していきましょう。就業規則の変更等をお考えの際には,是非,当事務所までご相談ください。