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2015/11/16 ウラジーミル・ソローキン

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  文化の分野における今年の最高は『マッドマックス 怒りのデス・ロード』だと思う(それにしてもこの軽薄感漂う日本語題名はなんとかならなかったのか。原題は“Mad Max:Fury Road”である。日本語題名のせいでだいぶ損をしている気がする。それはともかく、以下では『4』と略す)。



  私は『マッドマックス』3部作については、『2』を見たことがあるだけで、『1』はテレビで見ただけであり、『3』に至ってはテレビで見たこともなく、『マッドマックス』のファンでもオタクでもなかった。自動車やバイクに特段興味があるわけでもない。むしろ、その逆である。

  だからジョージ・ミラーが二十数年ぶりに『4』を撮っているということもまったく知らなかったのだが、『4』について新聞各紙の評がすべて手放しで称賛しまくっていたので、妻を誘って早速見に行った。

  妻は昔の3部作は1本も見ておらず、『マッドマックス』に関する予備知識もまったく持っていなかったが、感動しきりで、見終わったその場で妻の方から「また見たいね」と言ってきた。もちろん私も同感であった。




  しかし、なんやかやで再度映画館に足を運ぶ機会を逸していたところ、夏休みに乗ったシンガポール行きのANA便で『4』をやっていたので、すかさず見た。さて、1週間後の帰りの便は、貯めたマイルを使ってファーストクラスにアップグレードさせていたので、シートのテレビ画面が行きの便のものよりも二回りくらい大きい。迷ったが、大画面で『4』を見たいという誘惑に屈してまたも見てしまったが(おかげで、クリュッグやその他の高いワインをあらかた飲みそびれてしまった)、まったく飽きなかったのには自分でも感心した。





  『4』を見た者の大方の感動どころとしては、スキンヘッドのシャーリーズ・セロンの男っぷりがカッコいいとか、ウォーボーイの思いに自分を重ねて身につまされたといったあたりであろう(マックス役のトム・ハーディがカッコよくて感動したと思う者はあまりいないだろうが)。また、核戦争や化学兵器戦争後には世の中と人間がどうなってしまうかがわかりやすく描かれており(現実の被爆者からは「こんなものではない」とお叱りを受けると思うが)、その意味で、これは極めてよくできた反戦映画でもある。





  しかし、そんな論理的な説明などどうでもよく、とにかく全編イカレていて突き抜けていて、それが感動モノなのである。

  このイカレ度合、突き抜け度合は、映画でいえば『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997年、ポール・バーホーベン監督)以来であり、文学でいえばウラジーミル・ソローキンである。

  『4』を見てそのイカレ感・突き抜け感にしびれたという諸兄姉には、ソローキンを読んでみることをお勧めする。『青い脂』や『氷』よりも『親衛隊士の日』の方がとっつきやすいだろう。もし興味があったら、各自で書評を検索してみられたい(ソローキンがノーベル文学賞を取る日が来ることは多分永久にないであろうが)。