2015/10/16 ミライのクルマ
日本車も魅力的
9月下旬から10月上旬にかけてのテレビ番組改編期に,マツコ・デラックスが夜の街を気ままに徘徊するという深夜番組の特番が放送され,その中で,マツコ・デラックスがトヨタ自動車の工場見学に訪れて,自動車の生産工程等を見学するという企画を目にしました。
特殊鋼板のプレス加工や溶接といった作業がオートメーション化され,人と機械が連携しながらラインを流れる自動車を完成させていくという工場見学ならではのダイナミズムを感じられたのはもちろんですが,FCV(燃料電池車)の開発に関する場面は興味を惹かれました。
燃料電池といえば,一昔前は人工衛星や宇宙ステーションなど,宇宙開発の場面で使われてはいたものの,燃料電池車は,開発はされていても1台数億円もする状況で,家庭に広く普及することなど,ドラえもんが開発できるくらいの未来のことなのだろうと漠然と思っていたのですが,トヨタは,他のメーカーに先駆けて,燃料電池を使用したFCVを2014年12月から市販しているというのです。その名も「MIRAI(ミライ)」。
FCVに関しては,発電のための「燃料」となる水素の補給拠点である水素ステーション等のインフラ整備に多額のコストがかかるとか,現状はトヨタしかFCVを市販しておらず,水素ステーションの採算がとれない,したがってインフラ整備も進みにくいといった論拠で,今後の普及に消極的な見方もあるようです。
それでも,数年内には,ホンダや日産もFCVの市販に踏み切る見通しであり,国や自治体が補助金を支給する等してインフラ整備の後押しをしていることもあって,長い時間をかけて徐々に普及していく可能性は十分にあるのではないかと思います。何より,前出の番組中,トヨタの豊田章男社長の「資源のない日本には良い車だ」という言葉に,資源輸入国である日本の未来を支える一つの可能性を見た気がします。
確かに,世界の石油可採量は増えていると言われているし,もしかすると海底地下資源採掘の技術革新によって,日本でも豊富な海底地下資源を採掘できる日がくるかもしれないけれど,現状,原油に関しては中東やロシアといった地政学リスクの比較的大きな地域に依存していることや,海底地下資源の採掘にあたっては中国をはじめとする近隣諸国からの横やりが入る可能性が否定できないことを考えれば,水素をエネルギー源とする技術の開発は日本のエネルギー政策の安定を図るためには重要なことなのだろうと思います。
クルマの話から日本のエネルギー政策に関わる大きな話に飛んでしまいましたが,トヨタは,今後,高級車LEXUSブランドでもFCVの開発を進めているようで,LEXUSのフラッグシップモデルであるLSでも,2から3年後くらいにFCVが発売されるのではないかと噂されています。
現行モデルのLEXUSは,メルセデスベンツ,BMW,Audiといったドイツの高級車の後塵を拝しているとも評されているようですが,少なくとも日本では,VWの不祥事によるイメージダウンで少なからず普及にブレーキがかかってしまうであろうクリーンディーゼル車に代わる次世代自動車として,そして同時に,乗る楽しさも味わえるクルマとして,FCV普及の足掛かりを作ってもらいたいなと思います。