2015/09/16 ウィスキーはお好きですか?
トワイスアップがおすすめ
少しブームは過ぎてしまった感はあるが,巷ではウィスキーが流行っている様子である。いうまでもなく,某テレビ局の連続ドラマの影響なのであるが,日本製のウィスキーの代表格である,ニッカウヰスキーの余市,サントリーの山崎,白州,響といった商品はしばらく品薄状態が続き,原酒が枯渇しそうであるということで,現在は,10年,12年などという年数のついたものを止め,年数がない仕様になって発売されている(なお,10年,12年という年数は,使用されている原酒が最低10年,12年のものということである。)。原酒をつくるのに,最低でも10年かかることを考えれば,10年前に現在の需要を予測することは不可能に近く,メーカー側のこのような対応はやむを得ないところだろうが,余市10年を飲んで感動した記憶のある私にとっては,非常に残念な事態である。
巷のウィスキーブームに刺激を受けて,元来ウィスキー好きの私にも第三次ウィスキーブームが到来し,ウィスキーを飲んでいる毎日である。元々,ウィスキーなる飲み物を知ったのは大学生の頃で,このときはバーボンウィスキーばかり飲んでいた。というより,バーボンウィスキーしか知らなかったといった方が正確であろう。これが第一次ブームである。その後,しばらく浪人生などをしていたこともあり,酒からは遠ざかっていたのだが,仕事を始めてからというもの,自宅近所のバーに通い詰めるようになり,そこで,スコッチウィスキーに出会った。これが第二次ウィスキーブームである。このときの好みは,とにかく華やかな香りのするウィスキーで,スコットランドにたくさんあるウィスキー蒸留所の中でもスペイサイド,ハイランド,ローランドのものでなおかつピートの香りが少ないものを好んで飲んでいた。このブームも去りしばらく焼酎などを飲んでいたが,上記のとおり,ウィスキー熱が再燃し,現在の好みは,ウィスキー好きが最終的に行き着くとも言われている,ピートの香りの強いアイラのウィスキーである。このアイラのウィスキーは,スコットランドのアイラ島で作られている。
世界には,5大ウィスキーといわれるウィスキーが存在し,スコットランドを始め,アメリカ,カナダ,アイルランド,日本がその産地である。また,その原料(大麦,トウモロコシなど)と製造方法(ポットスチルという蒸留装置によるものか,連続式蒸留装置によるものか)などにより,それぞれ味や香りなどが異なる。日本のウィスキーは,ウィスキーの始祖というべき竹鶴政孝氏によりスコットランド式のウィスキー製造がもたらされたから,当然のことながらスコットランドのものと味や香りの方向性が類似している。
スコットランドのウィスキーは,大麦を発芽させ,乾燥させてから温水に混ぜて麦汁にして,酵母を入れて発酵させ,もろみを作り,これを単式蒸留装置により蒸留してアルコールを生成し,できたアルコールを樽に詰めるという作業で作られる。このそれぞれの過程において,大麦の乾燥に何を使うのか,発酵過程でどのような入れ物を使うのか,蒸留をどのような設備でどのように行うのか,樽はどのような大きさの,どのような材質の樽にいれるのかにより,出来上がりのウィスキーの風味に大きな影響を与える。
この違いにより各蒸留所で個性が異なるのであるが,この点において,なにより驚きなのは,現在あるウィスキーの味は偶然の産物であり,偶々その土地に存在していたものを使ったことからできたということである。例えば,私が最近好んでいるアイラ島のウィスキーには,アイラ島で日頃から燃料に使用されている泥炭を麦芽の乾燥に使用し,泥炭の溶け出した水を使用したがために,ピートの香り(煙たいような,正露丸のような香り)がし,これが大きな特徴となっている。
この味と香りが蒸留所によりそれぞれ異なっていることで,ウィスキーの楽しみは尽きない。第二次ウィスキーブームで散々飲んだはずなのに,また第三次ウィスキーブームが来るほど楽しめるのはこのおかげである。なお,ウィスキーに良く付けられているシングルモルトという名称は,単一の蒸留所で作られた原酒のみからなるウィスキーのことで,シングルカスクというのは,ひとつの樽から出されたブレンドがなされていないウィスキーのことである。シングルカスクは同じ蒸留所から作られた複数の原酒を使用していることから,実は年によって少しずつ味が異なっている(私にはあまりわからないが,違っているらしい)。
ウィスキーのうんちくは上記以外にいろいろとあるが,うんちくはともかく,長い年月をかけて作られるウィスキー製造に携わった人々の苦労や思いを感じ,華やかなウィスキーの香りを味わいながら,一日の終わりをウィスキーで締めるのがなにより楽しい。私の第三次ウィスキーブームはまだまだ続きそうである。