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2014/02/17 有期労働契約について

弁護士 57期 吉田 礼明

1 ある日の相談


   「当社の社員には、いわゆる契約社員(有期労働契約により雇い入れた社員)がいますが、契約期間満了にあたって特に更新しない扱いとすることについて、何か法律上問題があるのでしょうか?」



2 原則論と労働契約法19条


 (1) 有期労働契約とは「期間の定めのある労働契約」であり(労働契約法17条1項)、当事者による特段の行為を要することなく、期間の満了により当然に、契約は終了するのが原則です。

 (2) ただし、以下の1)や2)の場合には、労働者が更新の申込み等をしたにもかかわらず使用者がこれを拒絶することは「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」には許されず、「使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」とされています(労働契約法19条)。

  1) 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められる場合(いわゆる実質無期型)

  2) 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる場合(いわゆる期待保護型)

 (3) そのため、例えば、有期労働契約が複数回更新され、その合計期間がそれなりの期間になっているような場合や、有期労働契約の締結や更新にあたって、使用者に、特別な事情がない限り更新がされるかのような期待を労働者に生じさせるような言動があるような場合には、更新拒絶が許されないこともありえますので、注意が必要です。



3 労働契約法18条


 (1) ところで、現時点では問題になりませんが、平成25年4月1日以降に締結される有期労働契約については(同日より前に締結した有期労働契約を同日以降に更新する場合の、当該更新後の有期労働契約も、含まれます)、労働者が「期間の定めのない労働契約」の締結の申込みをしたときに、使用者がこれを承諾したものとみなされる場合があるので、注意が必要です。

 (2) すなわち、平成25年4月1日以降に締結される有期労働契約については、「同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。」とされています(労働契約法18条1項。いわゆる無期転換)。

   例えば、平成25年4月1日に契約期間3年の有期労働契約を締結し、平成28年3月31日の期間満了にあたってこれを更新した場合、労働者は、平成30年4月1日以降、期間満了までの間に(平成31年3月31日までの間に)、使用者に対し、平成31年4月1日から労務が提供されることとなる「期間の定めのない契約」の締結の申込みをすることができるということになります(使用者はこれを拒むことができず、無期労働契約が締結されることになります)。

 (3) なお、「2以上の有期労働契約」というのは、なにも更新されて2以上となった場合だけではなく、例えば、平成25年4月1日に締結した契約期間3年の有期労働契約が更新されずに終了し、その後3か月経た上で、再度、同じ使用者と労働者の間で有期労働契約を締結したような場合も含まれますので(空白期間がある場合も含まれますので)、注意が必要です。

 (4) また、「通算した期間が5年」という点については、空白期間が6か月以上である場合には、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は算入しないとされています(労働契約法18条2項)。ただし、空白期間は、「当該空白期間の直前に満了した一の有期労働契約の契約期間(当該一の有期労働契約を含む二以上の有期労働契約の契約期間の間に空白期間がないときは、当該二以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間)が1年に満たない場合にあっては、当該一の有期労働契約の契約期間に2分の1を乗じて得た期間を基礎として厚生労働省令で定める期間」とされていますので、注意が必要です。

 (5) そのため、平成25年4月1日以降に締結される有期労働契約については、無期転換を避けようとするのであれば、労働者との合意により5年を超える更新はしないこととするなどの対応が必要になります。