2023/07/26 ナポリピザの条件
薩摩隼人
①生地に使用してよいのは、小麦粉、水、イースト、塩のみ
②生地は道具を使わずに手で延ばす
③窯で直焼き
④窯の燃料は薪・木くずのみ
⑤仕上がった生地に額縁があること
⑥トッピングにもこだわる(トマトソースのトマトの品種など)
以上の条件を満たすピザだけが、ナポリピザと称してよいこととされている。
そんなナポリピザに魅了された私の甥(高校1年生)は、将来、ピッツァイオーロ(ピザ職人)になって世界大会で優勝するという夢を抱いている。
甥は、小学2年生の時、地元のナポリピザを出すお店で厨房を覗いたとき、窯の中でピザが焼き上げられていく様子に感動した。それもそのはず、ナポリのピッツァイオーロの技術は2017年に世界無形文化遺産に登録されるほどのものであり、少年が心を奪われるのも無理はない。
その日以来、甥のピザ作りがはじまった。生地の材料の分量、発酵時間、発酵温度、生地の伸ばし方などなど、ピザ作りのすべてを独学で研究し、ついにはドラム缶でピザ窯を手作りするまでに至った。備忘録も兼ねてインスタグラムで発信するようになると、日本各地のピッツァイオーロからコメントが来るようになったそうだ。そして、その情熱は、地元の新聞やテレビ番組(「超無敵クラス」2023年5月7日放送分はhuluで視聴できます)にも取り上げられるまでになった。
甥は高校卒業後、ナポリへ発つ。
夢の実現に向けて情熱を燃やし続ける甥を心から尊敬するし、見ていて気持ちが良い。そして何より、15歳にしてここまで夢が具体的なのは、強い。彼にはぜひとも夢を叶えてほしい。
しかし、ピッツァイオーロとして世界大会で優勝したあと、彼はどのようなピッツァイオーロとして生きていくのだろうか。どこで店を構えるのだろうか。どのようなレストラン経営をしていくのだろうか。15歳の時点で考えるべきことではないが、いずれ避けては通れない自問自答が待っていることだろう。 それでも彼ならきっと、情熱を絶やさぬ限り、悩んでは自分なりに答えを出して、彼らしいピッツァイオーロ人生を歩んでゆくに違いない。