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2023/10/16 ライドシェア解禁はいつ・・・?

サンデードライバー

 今年に入って、本格的に外国人観光客が戻ってくるなど、一気にコロナ前の生活を取り戻している状況にありますが、そんな中、需要が急速に戻ってきたタクシー業界が、人手不足に喘いでいます。

 コロナ禍の需要急減をきっかけにドライバーが業界を離れた(引退等)という事情もあるようですが、そもそもの根本的な要因は、少子高齢化に伴う労働力人口の減少、低賃金等からくるドライバーのなり手不足・高齢化にあり、さらには、いわゆる2024年問題が、バスやタクシー業界にも追い打ちをかける見込みです。

 最近、都市圏でさえ、流しの空車タクシーを見つけることは簡単ではなくなった実感があり、時期や時間帯によっては、配車アプリを使っても、なかなか空車を確保できないことがあります。さらには路線バスも2024年を待たずして運行本数が減少してきています。

 対策として、国交省は、今月(令和5年10月)から、都市部以外での個人タクシー営業許可や個人タクシードライバーの上限年齢(75歳から80歳へ)引上げ等の応急手当を始めたようですが、これらは一時凌ぎの効果しかないように思います。

 そこで、あらためて議論されているのが、ライドシェア(Uber、DiDi等)解禁の是非です(日本では、現在、道路運送法がいわゆる白タク行為を禁止しており、ライドシェアは、同法に抵触すると解されています)。

 しかし、既存業界による反対や、ライドシェアに対する日本人の抵抗感から、解禁はなかなか見通せない情勢です。

 とはいえ、近い将来、タクシー・バス需要を満たすことが難しくなっていくことが確実視される状況下で、数年内の完全自動運転タクシーの実現や、若手ドライバーの確保といった解決策も現実的でないとなれば、ライドシェアという選択肢を排除することが賢明なのか疑問があります。

 ライドシェアへの抵抗感は、知らないものへの漠然とした抵抗感という面も少なからずあるように思います。

 日本ではライドシェアが解禁されていないこともあって、詳細はあまり知られていませんが、既存のライドシェア仲介サービスでは、利用者とドライバーが相互に評価し合い、その評価点を通じて、不適切なドライバーは淘汰される仕組みが採用されており(※)、海外旅行の際に利用した日本人利用者の声を聴くと、おおむね好評のようです。

※評価は1~5点の5段階評価で行われ(問題なければ5点)、1回の低評価によって評価点が0.01点ほど変動する模様です。オーストラリア在住の方のお話では、評価点4.70以上がボリュームゾーンであり、これを下回るドライバーは、何かしらの問題がある可能性が高いと予測ができるため、点数をみて手配を回避することもできるようです。

 主な解禁反対の理由とされる安全面についても、ライドシェア解禁自体は、電動キックボードの規制緩和とは異なり、細かな交通ルールを学んだこともない無免許運転者を公道に送り出すわけではありません。一方、プロドライバーの高齢化が進む中で、プロドライバーに過度に依存することが安全確保に繋がるという論にも、説得力が失われつつあります。

 既存の枠組みで需要と供給のバランスがとれていた時代であれば別ですが、供給不足が顕在化してきた現在や、供給不足が一層加速するであろう将来においては、利用者の選択に委ねるという考え方があってもよいのではないでしょうか。

 特に過疎地域では、路線バスの減便・廃線が進むなど、背に腹は代えられない状況になってきており、京都や北海道など一部地域では、実証実験も行われているようです。

 国会議員や既存業界の人たちだけではなく、必要に迫られている地域の人たちの声や実証実験の結果も反映した議論が望まれます。