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2018/01/23 個人根保証人等の責任範囲の制限

弁護士 59期 弁護士  眞 鍋  洋 平

ー極度額・元本確定ー

1 根保証契約とは



  根保証契約とは,一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約のことをいいます(現行民法465条の2,改正民法465条の2)。つまり,根保証契約は,あらかじめ定めた主債務の範囲に属する限り,保証時に未発生の債務であっても,また債務の個数や個々の債務の額が決まっていなくても保証の対象とすることができます。

たとえば,不動産の賃貸借契約に基づく賃借人の債務を保証することは,一般的には,賃貸借契約に基づく債務という範囲に属する不特定の債務(継続的に発生する賃料・更新料債務,原状回復義務など)を包括的に保証することであり,根保証契約とされています。





2 個人根保証契約・個人貸金等根保証契約


  改正民法は,このような根保証契約のうち保証人が法人でないものを「個人根保証契約」とした上で,現行民法下の貸金等根保証契約(個人根保証契約のうち主債務の範囲に貸金等債務,つまり金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務が含まれるもの)を「個人貸金等根保証契約」と改めました(改正民法465条の2,465条の3)。





3 個人根保証人の責任範囲の制限


  現行民法下では,根保証人の責任範囲を制限するための極度額や元本確定(元本確定が生じると,保証の対象がその時点で存在する主債務のみに限定されます)に関する規律は,個人の貸金等根保証契約に関するものに限られています。

  

  これに対し,改正民法は,個人根保証人の責任の上限を予測可能なものとするとともに,著しい事情変更があったといえる定型的な事象が生じた場合にそれ以後の責任の拡大を防止するため,すべての個人保証契約につき,以下のとおり,極度額や元本確定に関する一部規律の適用範囲を拡大しました。

(1) 極度額の定めの有効要件化

  改正民法は,すべての個人根保証契約について,書面又は電磁的記録による極度額の定めを有効要件とし,これを欠く個人根保証契約は無効としました(改正民法465条の2)。

(2) 元本確定事由の規定

  また,改正民法は,貸金等根保証契約についての元本確定期日の定めに関する規律をすべての個人根保証契約にまで拡大することは見送ったものの,すべての個人根保証契約について,?債権者が保証人の財産に対する金銭債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき(ただし強制執行等の手続の開始があったときに限ります),?保証人が破産手続開始決定を受けたとき,?主債務者又は保証人が死亡したとき,のいずれかの事象が生じたときには,元本が確定すると規定しました(改正民法465条の4第1項。貸金等根保証契約に関しては,同条第2項にも元本確定事由を定めており,現行民法の実質的な改正はありません)。

(3) 実務上の注意

  したがって,改正民法施行後は,貸金等根保証には該当しない個人根保証を取り付ける場合(不動産賃貸借契約に際して,賃貸人が賃借人の同居人や親族,賃借人法人の代表者といった個人から保証を取り付ける場合など),賃貸借(保証)契約書に極度額の定めが漏れていないか,契約後も元本確定事由が生じていないかなど十分注意する必要があります(極度額は,取引額,他の担保の有無,主債務者の信用力などに応じて決めていくことになるでしょう)。





4 個人の求償権保証契約


  現行民法下では,債権者・法人根保証人(保証会社など)間の根保証契約において極度額の定め又は一定の規律に従った元本確定期日の定めのいずれかがないときに,法人根保証人の主債務者に対する求償権について締結された個人保証契約(以下「個人の求償権保証契約」といいます)を無効とする規律の適用範囲は,上記根保証契約の主債務の範囲に貸金等債務が含まれる場合に限られています。

  これに対し,改正民法は,上記規律のうち極度額に関する規律の適用範囲をすべての個人の求償権保証契約に拡大し,貸金等債務に関するものに限らず,債権者・法人根保証人間の根保証契約において極度額の定めがないときには,個人の求償権保証契約を無効としました(改正民法465条の5)。

  貸金等債務に関するものを除けば,法人根保証人が関与するのは主債務者が保証人をつけられない場面が多いと思われますので,今回の改正によって影響を受ける取引は多くないかもしれませんが,上記改正は,個人保証人の保護を徹底するために上記3?の改正の趣旨をすべての個人の求償権保証契約に及ぼしたものとされています。