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2021/04/15 給料が上がらなければ消費は増えず物価も上がらない(か?)

弁護士 61期 吉 田 礼 明

1 いわゆる同一労働同一賃金


  平成30年に、正規・非正規間の不合理な待遇差の解消等の観点から、従来のいわゆる「パートタイム労働法」につき、短時間労働者と並んで有期雇用労働者を組み入れ、名称もいわゆる「パートタイム・有期雇用労働法(正式名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)」とするなどの改正がなされて、大企業については令和2年4月1日から既に施行され、中小企業(※)については令和3年4月1日から施行されることになっています(いわゆる同一労働同一賃金。なお、いわゆる労働者派遣法も同様の観点から改正がされ令和2年4月1日から施行されていますが、本稿では割愛させていただきます)。

※ https://www.mhlw.go.jp/content/000596564.pdf 参照




2 パートタイム・有期雇用労働法における「不合理な待遇の禁止」


  パートタイム・有期雇用労働法では、「事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。」とされています(同法第8条)。

  これは、上記改正前のパートタイム労働法の第8条と平成30年改正前の労働契約法第20条を合体させ、修正したものです。




3 平成30年改正前の労働契約法第20条と同法下での最高裁判例


  平成30年改正前の労働契約法第20条は、「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」と定めていました。

  同法下で2件の最高裁判例、すなわち、ハマキョウレックス事件判決(最高裁平成30年6月1日第二小法廷判決 ※1)及び長澤運輸事件判決(最高裁平成30年6月1日第二小法廷判決 ※2)があり、それまでの解釈上の問題に決着がつけられました。

  上記2件の最高裁判決は、厚生労働省策定の同一労働同一賃金ガイドライン(※3)にも反映されており、「その判例としての判旨においても、また判断事例としても、基本的には2018年短時間・有期雇用労働者法(パートタイム・有期雇用労働法)の均衡待遇原則(8条)の意味内容を知るうえで、ほぼそのまま参照されるべきものといえる。」とされています(菅野和夫「労働法第12版(弘文堂)」359頁。なお、「(パートタイム・有期雇用労働法)」の部分は筆者による挿入)。

  なお、ハマキョウレックス事件判決では、通勤手当の差並びに無事故手当、作業手当、給食手当及び皆勤手当の不支給が不合理、住宅手当の不支給は不合理でないと判断され、長澤運輸事件判決では、定年後再雇用の嘱託社員の労働条件について、基本賃金+歩合給(嘱託社員)と基本給+能率給+職務給(正社員)という相違並びに賞与、役付手当、住宅手当及び家族手当の不支給について不合理でない、精勤手当の不支給(及び同手当の時間外手当の基礎賃金への不算入)は不合理と判断されています。

  いずれも一般論としてどうこう言えるものではありませんので、具体的に興味のある方は、判決書の内容をよくご確認いただければと思います。

※1 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/784/087784_hanrei.pdf
※2 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/785/087785_hanrei.pdf
※3 https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf




4 最近の最高裁判例


  これもまた平成30年改正前労働契約法下でのものとなりますが、年末年始勤務手当、祝日割増賃金及び扶養手当の不支給並びに私傷病による病気休暇における有給(正社員)・無給(時給制契約社員)の相違及び夏期冬期間休暇の有(正社員)・無(時給制契約社員)を不合理と判断した3件の最高裁令和2年10月15日第一小法廷判決と(※1?※3。いずれも使用者は日本郵便)、退職金の不支給は不合理でないと判断したメトロコマース事件判決(最高裁令和2年10月13日第三小法廷判決 ※4)、賞与の不支給及び私傷病による欠勤の有給(正職員)・無給(アルバイト職員)の相違について不合理でないと判断した大阪医科大学事件判決(最高裁令和2年10月13日第三小法廷判決 ※5)があります。

  これらも一般論としてどうこう言えるものではありませんので、具体的に興味のある方は、判決書の内容をよくご確認いただければと思います。

※1 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/772/089772_hanrei.pdf
※2 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/773/089773_hanrei.pdf
※3 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/771/089771_hanrei.pdf
※4 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/768/089768_hanrei.pdf
※5 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/767/089767_hanrei.pdf