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2015/09/16 「条文は読み方を工夫してみると意外に新たな発見がある」

サイドマウンテン

  突然ですが,本雑記帳をご覧の皆さんに,ある2つの条文を紹介したいと思います。

  1つ目は,日本国憲法第23条です。
  同条は「学問の自由は,これを保障する」と規定しており,広く国民に対して,(1)学問の研究をする自由,(2)研究結果を発表する自由,(3)研究結果を教授する自由などを保障していると言われています。

  2つ目は,民法第882条です。
  同条は「相続は,死亡によって開始する」と規定しており,人が死亡することによって,同人の権利義務が相続人に承継されるということを明示的に定めています。

  これらの条文は,いずれも法学部の学生であれば,憲法や民法の授業で必ず学ぶといってもよいほど有名な条文ですが,この一見関連性のなさそうな2つの条文にはとある共通点があります。特段法律に詳しくなくても勘のいい人であれば気づく共通点なのですか,みなさんお気づきでしょうか。



  正解は・・・いずれの条文も五・七・五の川柳になっている,でした(笑)
  前者は「学問の・自由はこれを・保障する」と読めますし,後者は「相続は・死亡によって・開始する」と読めますよね。

  私はこのことを,いま話題(?)の某法科大学院に在学していたときに,とある民法の先生から教えていただき,そういう条文の読み方もあるのかと感心したのを覚えています。

  なお,インターネットでこれ以外にも同じような条文がないか調べてみたところ,軽犯罪法にも同様のものがありました。同法第1条には,第1号から第34号まで列挙された行為のいずれかを行った者を拘留または科料に処するということが規定されているのですが,その第22号に「こじきをし,又はこじきをさせた者」と書かれています。見事に「こじきをし・又はこじきを・させた者」と,五・七・五になっていますね。


  さて,このような五・七・五になっている条文があるということは,当然,五・七・五・七・七と短歌調になっている条文はないのかという点も気になるところですが,先に述べた民法の先生によれば,旧憲法,すなわち大日本帝国憲法の中にあるとのことでした。そこで,私のほうで大日本帝国憲法の条文にあたってみたところ,たしかにありました。

  第5条「天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行フ」

  なるほど,見事に「天皇は・帝国議会の協賛を・もって立法・権を行う」と分けることができます。若干,語句の分け方が強引なのはご愛嬌です。

  そしてこちらも,インターネットでこれ以外に短歌調になっている条文がないか調べてみたところ,実は現行の日本国憲法の中にもありました。

  第82条第1項「裁判の対審及び判決は,公開法廷でこれを行ふ」
 

   こちらも「裁判の・対審及び判決は・公開法廷で・これを行ふ」と分けることができますね。語句の分け方は先ほどの条文よりも自然ですが「公開法廷で」の部分が字余りになってしまっているのが残念なところです。


  以上,我々が普段行っている法解釈とはまったく関係のない条文の読み方をご紹介しました(くだらなくてすみません・・・)。ところで,あらためてこの記事のタイトルをご覧になり,なにかお気づきになりませんか?新たな発見があるでしょう(笑)