弁護士法人 小野総合法律事務所 ONO SOGO LEGAL PROFESSION CORPORATION

ブログBLOG

2014/11/18 「貯金箱を持っていっても物が買えない!?」

サイドマウンテン

  よくわからないタイトルを付してしまいましたが,今回はお金の支払方法に関する法律関連のトリビアを1つご紹介します(すでにご存じの方ごめんなさい)。


  わが国には,平成26年10月1日現在,1924もの法律が存在するようで(総務省の法令データ提供システムによる),私が法律を勉強し始めたときも,日常のあらゆる場面に応じて法律によるルール化がなされていることに驚きを覚えたものですが,みなさんが買い物をしてお金を支払う場面についても,その支払方法に関するルールが定められています。その1つが次の条文です。

「貨幣は,額面価格の二十倍までを限り,法貨として通用する。」

  これは「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」という法律の第7条ですが,どういうことかというと,要は,「1回の支払いで,同じ貨幣は20枚までしか使えない」という意味です。法的には,「貨幣は20枚までしか強制通用力がない」などと言います。

  よって,常日頃から小銭を貯金していて,それを使うためにコンビニエンスストアで120円の飲み物を買おうと1円玉120枚をレジに出しても,お店側がこれを特別に受け入れる場合を除き,弁済としては無効ということになります。

  もっとも,1つの貨幣につき20枚までは有効ですので,同じ場合で,1円玉20枚と5円玉20枚を出せば,(そんなことをされたコンビニエンスストアにとってはなんとも迷惑な話ですが,)法律上は弁済として有効です。


  では,100万円の買い物をするときに,1万円札100枚で支払うのはどうなんだという疑問が湧いてきますが,これは弁済として有効です。なぜなら,お札は「貨幣」ではないからです。

  一般に通貨には,?貨幣,?紙幣,?銀行券が存在します。我が国の場合,1円玉から500円玉までの6種類の硬貨が?貨幣であり,千円札,五千円札,一万円札が?銀行券です(二千円札なんていうのもありましたね…)。なお,?紙幣とは,本来,政府が発行する紙製の通貨を意味しますので,現在のわが国には存在しません(ただし,紙製の通貨全般を指して,広く「紙幣」ということもありますので,その場合は,千円札なども「紙幣」に含まれます)。

  そうすると,先ほどの条文には「貨幣は,」と書いてありましたので,銀行券による支払いは,この条文の埒外ということになります。

  なお,銀行券の強制通用力については,日本銀行法の第46条第2項に「日本銀行が発行する銀行券…は,法貨として無制限に通用する」との定めがありますので,20枚以上使って支払ってもよいということになります。よって,例えば,100万円の商品を,1000円札1000枚で支払っても,弁済として有効です。



  以上,あまり役に立つ知識ではないかもしれませんが,これからの忘年会シーズン,酒の席上での小話として,頭の片隅にでも覚えておいていただければ幸いです。