弁護士法人 小野総合法律事務所 ONO SOGO LEGAL PROFESSION CORPORATION

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2013/11/19 【片方の耳】

団子もらってついていく犬猿雉はどう思っていただろう

  広告の真ん中にホロホロと涙をこぼして泣いている鬼の子供がおり,拙い字で「ボクのおとうさんは,桃太郎というやつに殺されました。」と書かれている。そして「一方的な『めでたし,めでたし』を生まないために,広げよう,あなたがみている世界」とのコピーが添えられている。これは日本新聞協会が「しあわせ」をテーマに募集した,2013年度「新聞広告クリエーティブコンテスト」の最優秀賞広告である。

  桃太郎は一体どこの誰(国)で,鬼に仕立てられているのは誰であろうか。複雑な現在社会を単純に割り切ることはできないのかもしれないが。


閑話休題

  弁護士は一方当事者からの説明を聞くほかはないので,ときとして誤った評価や先入観で物事を見がちである。「不当な」「正当な」といった修飾語は,都合のよい事実を前提に,特定の価値観の下で下された判断でしかないことも少なくない。依頼者とは言え,一方当事者の言い分を無批判に追随することは,紛争の実態を掴めず,適切な解決にも繋がらず,実は依頼者の利益にもならない。そうかと言って紛争の渦中にいる当事者に中立的な説明・評価を求めることは無理というもので,これを客観的な立場で補うことが,我々が介在する意味の一つである。

  さらに広げて言えば,私どもの業務は多種多様な人生観や常識を持つ,様々な知識層・経済層の人間を関係者とするものであるから,これらの多くの「層」の人たちの考え方を広く理解するだけの想像力を持たなければならない。依頼者のみならず相手方の真意を理解するために必要であると同時に,紛争の解決に当たっての説得の際にも必要なことである。硬直した偏狭な価値観を押し付けることは危険であり,説得力を持たない。

  が,他方で,自分の信じる「正義」を実現するには,自分の判断や価値判断にそれなりの自信をもって説得を試みなければならない。優柔な面も持ち合わせなければならない半面,一本「スジ」が通っていなければならないのである。


  冒頭の広告をみたとき,なぜか,初心者であった頃に,先輩弁護士から常々「我々は,片方の耳からしか物事を聞くことができない立場だから」という言葉を聞かされていたことを思い出し,いろいろと考えた次第。