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2020/02/15 スマホ決済

非接触型IC決済信者

  特に昨年から、キャッシュレス決済、中でもスマホ決済に注目が集まっていますね。




  昨年10月の消費増税に伴う景気対策の一環で、キャッシュレス・ポイント還元事業が実施されていますし、また、この機にキャッシュレス決済の覇権を握ろうと、特にメルペイ(NTTドコモ提携)・PayPay(ソフトバンク・ヤフー合弁)・楽天ペイメント(au提携)・LINE Pay・・・(順不同)といったスマホ(スマートフォン)決済事業者が、やりすぎではないかというほどのポイント還元等を通じて、利用者数と加盟店数の拡大を図ろうと、しのぎを削っています。




  その成果なのでしょうが、スマホ決済ができることを示す表示(ロゴ)やQRコードを印刷したボードが設置されているお店もよく見かけるようになりました。私の周りを見渡しても、使っている人が増えたことを実感します(その理由は、ほとんどの場合、現在のキャンペーンによるポイント還元率の高さにあるようです。)。




  ただ、私自身は、どうしても、クレジットカード一体型のiD(後払い式電子マネー)や自動チャージ式の交通系電子マネー(いずれも自動的にクレジットカードにて後払い)といった、端末機器にカードをタッチするだけで決済が完了する非接触型IC決済手段に加えて、スマホ決済手段の常用への一歩を踏み出せずにいます。




  私と同じようにスマホ決済を躊躇する人の中には、直近のPayPayやセブンペイの問題(第三者による不正利用問題)などを受けて、セキュリティ面での不安を感じている人もいるでしょうし、スマホ決済手段の使い方がわからない(そもそもスマホをもっていない・・・)人もいるでしょう。




  私がスマホ決済手段の常用に踏み出せないことには、そういった理由もあるのですが、最も大きな理由を考えてみると、要するに、現状の常用決済手段であるiDや自動チャージ式の交通系電子マネーを超える利便性を見出せない(面倒くさい)ということに行きつきます。




  利用者側の手間を考えた場合、主として、


  1)スマホ決済は基本的に前払いチャージ式(資金決済法の「第三者型前払式支払手段」)で、その残高から決済する必要があり、いちいちチャージするのも残高を管理するのも面倒・・・・(交通系電子マネーもチャージ式ですが、公共交通機関は日常的に使用しますし、大部分の公共交通機関は交通系電子マネー以外のキャッシュレス決済手段を利用できないため、保有せざるを得ないという違いがあります。)、


  2)スマホ決済特有のQRコード決済やセルフ決済(店頭にあるQRコードをスマホで読み取るか、アプリ上で自ら店舗を検索したうえで、金額を入力して決済し、決済完了画面を店舗に提示します。)は、アプリを起動したうえで(使い方によってはパスワードを入力してログインし)(セルフ決済の場合は自ら目的の店舗を検索し)自ら金額を入力するなどの手間と時間がかかる(少なくとも数秒から数十秒かかる)、


  という点が挙げられるでしょうか。




  誤解がないようにフォローしておくと、1)については、前払式のスマホ決済手段でも、自動チャージ設定が可能な場合が多いようですし、2)については、スマホ決済手段でも、バーコード決済(スマホのアプリで表示したバーコードを提示するだけで、店舗がこれを機械で読み取って決済。利用者は、自分で金額を入力する必要なし。)やスマホiD決済があるようです。




  とはいえ、これらの決済ができる店舗では、ほぼ例外なくクレジットカード一体型のiDや交通系電子マネーが使えますし、結局のところ、既存のクレジットカード一体型のiD等と利便性が同じか近い水準に止まるわけです。そう考えると、端末機器にカードをタッチするだけで後払いできるiDや自動チャージ式の交通系電子マネーは、利用者にとってかなり優れた決済手段なのだと再認識させられます。




  一方で、スマホ決済手段がクレジットカード一体型のiDや交通系電子マネーに優る点を挙げるならば、さきほどスマホ決済手段「特有」と述べたQRコード決済やセルフ決済は、店舗(加盟店)側におけるバーコードリーダーといった端末機器の導入が不要であり、初期コストが小さいため、小規模の加盟店を増やしやすいという点なのでしょう(現在、PayPay等は、加盟店数の拡大を図るために、期間限定で、加盟店側の継続的なコストである手数料も無料としているようです。)。




  クレジットカードや交通系電子マネーは使えないけれどもスマホ決済手段ならば使える、という店舗が、利用者にとって無視できないほどに増えたような場合や、さらなる技術(サービス)革新によって利便性がさらに向上した場合には、私もスマホ決済手段を常用していくのだろうと思いますが、正直にいえば、現時点では、そこまでには至っていないように感じます。




  本来のターゲットであるニコニコ現金払いを信条とする人たちをキャッシュレス決済に引き込むのも大変だと思いますが、既存のキャッシュレス決済に親しんだ層にスマホ決済手段を浸透させ、(ポイント還元等のキャンペーン終了後も)継続的に常用させることができるのか、(利用者への)過剰なポイント還元や(加盟店の)手数料無料といった一時的な措置だけでなく、利用者・加盟店にとっての利便性向上に向けたスマホ決済事業者の努力を引き続き見守りたいと思います。