弁護士法人 小野総合法律事務所 ONO SOGO LEGAL PROFESSION CORPORATION

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2018/10/15 リーマンショック直前の光景といま

もう10年

  当事務所は、本ページ(雑記帳)を毎月更新しているのだが、その執筆は、所属弁護士がおおむね1年に1回程度のペースで順番に担当している。



  今年も自分の担当時期がやってきたので、ふと思い立って10年前に自分が執筆した原稿を読み返してみた。10年前は8月に『いつまで続く建設ラッシュ』という見出しで執筆していた。少し引用してみる(以下、“・・・”部分が当時の原稿からの引用。)。



  “・・(略)・・駅前の交差点から周りを見渡すと、下層階から積み上がっていく建設中のタワー型マンションらしき建物が何棟も目に入ってくる。それはまるでシムシティ(昔流行った都市育成シミュレーションゲーム)の世界を体験しているようである。”



  “・・(略)・・見渡せる範囲で3、4棟のタワー型マンションが建設中だという現状は恐ろしい。1棟あたりの居住スペースが平均40階、各階に20室あるとして、1棟につき800世帯、4棟だと3200世帯が入居できる計算になる。それだけの人たちが短期間にどこからこの地域に流入してくるのか、想像を絶するものがある。”



  当時は、豊洲の住民でありながら、豊洲地区を舞台にしたタワマン建設ラッシュを横目に、正直奇異な光景に感じていたことを思い出す。



  その直後の平成20年9月にいわゆるリーマンショックが発生し、世界的な金融危機、経済不況を迎えて日本の不動産市況も例外なく冷え込んだことは周知のとおりであり、豊洲地区のタワマン販売も大きく落ち込んだようである。



  ただ、一般に、その落ち込みはタワマン建設ラッシュの問題の顕在化というよりも世界的な経済情勢の煽りを受けたもの、と理解されているようで、その後の世界経済の好転、アベノミクス、黒田日銀の金融政策、東京五輪が決まった効果等もあって、豊洲・有明地区のマンション開発の様子は10年前と同じか、それ以上のようにも見える。



  さらに、今は、都心や豊洲・有明地区に止まらず、お世辞にも都心に近いとは言えないような郊外にまでタワマン開発の波が押し寄せているようである。



  現行の制度上、開発をする側にとってはタワマン開発を選択することにメリットが大きいこともあり、タワマン開発は当面勢いを保つかもしれないが、タワマン林立による無秩序な人口増加で顕在化した最寄り駅(特に改札口)のキャパシティー超え、タワマン大規模修繕・建替えの困難さの問題、タワマン節税への税務当局の対応等、リスク要因は枚挙に暇がなく、昨今のタワマン人気は、長期的な構造の変化とは一線を画する「トレンド」「ブーム」で終わる危険性を秘めている。



  いまや日本の総人口も減少に転じていて、首都圏への人口流入もいつまで続くかわからない。



  いつの時代も最後にババをひくのは、何となく時代の「空気」に流されてそれに乗ってしまった人間である(先日発覚したシェアハウス投資を巡るスマートデイズ・スルガ銀行問題は、資料の改ざんや不動産評価の恣意的操作もさることながら、シェアハウスやカーシェアに代表されるシェアリングエコノミーの拡大という「空気」を悪用した一例であろう。)。



  その「空気」が何を根拠としたものなのか、持続性のあるものなのか、後になって他人のせいにはできない「自己責任」が世の常であることを肝に銘じたい。