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2013/11/19 下請いじめを防止する下請法

弁護士 61期 宮原 裕介

1 近年の運用状況

  平成25年5月22日,公正取引委員会は,平成24年度における「下請法」の運用状況等を発表しました。それによれば,平成24年度の下請法違反行為に対する指導件数は過去最多の4550件,同行為に対する勧告件数は16件とのことでした。数字だけを見てもピンとこないかもしれませんが,勧告件数は平成20年度以降,15件から18件と目立った増減はないものの,指導件数は,2949件(平成20年度),3590件(平成21年度),4226件(平成22年度),4326件(平成23年度)と増加傾向にあります。

  下請法とは,広く行われている様々な下請取引の公正化を図るとともに,親事業者よりも不利な立場にある下請事業者の利益を保護するため,独占禁止法(優越的地位濫用規制)を補完する法律として昭和31年に制定された法律であり,正式名称は,「下請代金支払遅延等防止法」といいます。

  ここでは,下請法の内容等をご紹介したいと思います。


2 全12条,4つの義務,11個の禁止行為

(1)下請法は全12条と少ない条文から成り立っていますが,まず,下請法の適用範囲を確認する必要があります。下請法は,「取引の内容」と「資本金規模」の両面から適用範囲を規定しています。適用を受ける「取引の内容」として,1)製造委託,2)修理委託,3)情報成果物作成委託,4)役務提供委託があり(いずれも下請法に定義規定があります),この取引の内容に応じて規定されている「資本金(出資金を含みます)規模」に該当する場合に,下請法の適用を受けます。例えば,1)製造委託の場合,資本金3億円を超える親事業者と個人又は資本金3億円以下の法人たる下請事業者間の取引及び資本金1千万円を超え3億円以下の親事業者と個人又は資本金1千万円以下の法人たる下請事業者間の取引が適用範囲とされています(2条)。

  日本では広範に下請取引が行われているとされていますので(だからこそ下請法が制定されたとも言われていますが),自社の関わる様々な委託取引(受託取引)が下請法の適用を受けないかを確認しておく必要があります。

  なお,建設工事は下請法の適用を除外されていますが(2条4項),建設業法により類似の規制を受けています。

(2)下請法は,その適用を受ける親事業者に対して4つの義務を定めています。1)注文書の交付義務(3条),2)書類作成・保存義務(5条),3)下請代金の支払期日を定める義務(2条の2),4)遅延利息支払義務(4条の2)の4つです。

  具体的な義務の内容ですが,1)については,下請代金の額や支払期日等を記載した書面を交付する必要があります。2)については,後日の調査等のため,取引に関する記録を書類として作成し,2年間保存することが義務づけられています。3)については,発注時に,物品等の受領日から60日以内で,かつ,できる限り短い期間内において定めなければいけません。4)については,下請代金の支払いが遅れた場合,下請事業者に対して受領後60日経過日から年14.6%の遅延利息を支払う必要があります。

(3)また,親事業者は11の行為が禁止されています。受領拒否,下請代金の減額,下請代金の支払遅延,不当返品,買いたたきなどです(4条)。

  過去に,公正取引委員会の勧告・公表の対象となったのは,ほとんどが下請代金の減額によるものです。下請代金の減額とは,下請事業者に責任がないのに,発注時に決定した下請代金を発注後に減額することをいいますが,例えば,協賛金の徴収,原材料価格の下落を理由とした減額のほか,消費税額相当分の不払もこれに該当し,名目や原因,方法にかかわらず,あらゆる減額行為が禁止されています。


3 毎年の調査,勧告・公表

  公正取引委員会等が毎年,親事業者,下請事業者に対する書面調査を実施しており,また,下請法違反行為があった場合には勧告・公表を行なっています。


4 最後に

  平成26年以降の消費税率の各引き上げを控え,平成25年6月5日に増税分の価格転嫁を円滑にする特別措置法案が成立しており,大規模小売事業者等に対し,消費増税額分の不払等を禁止していますので,下請法と併せて確認が必要です。