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2014/01/15 借地契約の分割(?)は可能か?

パートナー 弁護士 近 藤   基

1.本件借地契約の内容

  地主Aは、所有土地について、個人Bを借地人とする借地契約を結んでいる。AとBとの借地契約の契約書は1通であり、借地権の目的土地も1筆であるが、借地契約書では、目的土地が「甲部分」と「乙部分」の二つの部分に分けて表示されており、契約面積も別々に規定されている。現地でも土地は甲部分と乙部分に分かれており、甲部分にはBの自宅建物が、乙部分にはB所有のアパートが建っている。さらに、借地契約書では、契約期間についても、甲部分については契約締結日から40年間、乙部分については契約締結日から30年間と別々に定められている。ただし、賃料については、甲部分と乙部分とで個別に定められておらず、土地全体についての金額のみが定められていた。


2.1個の借地契約の分割は可能か?

  さて、今般Bが亡くなった。相続人はCとDの二人である。CとDは、遺産分割協議の結果、甲部分の上の自宅建物とそこについての借地契約をCが相続し、乙部分の上のアパートとそこについての借地契約をDが相続することで合意した。よって、CとDからAに対し、借地契約を二つに分割して甲部分の契約をCが、乙部分の契約をDが相続したいので、借地契約の分割を承諾してもらいたいとの依頼がきた。

  Aとしては、実質的にはC及びDの依頼について反対する理由はないし、依頼に応じても実際上の不都合は何もないように思えたが、そもそも、一人の借地人との間で1筆の土地を目的とし1通の契約書によって締結した借地契約を、双方の合意があるとはいえ、2個に分割することが可能なのであろうか、仮に可能であったとしても、何か不利益が生じないであろうかと心配になった。


3.契約書の数と契約の個数は必ずしも一致しない

  結論をいえば、Aとしては、C及びDの依頼に応じても何の問題もない。しかし、C及びDの依頼に応じることは、1個の借地契約を2個の契約に分割することになるわけではない。

  借地権の目的土地が全体として一筆であるからといって、借地契約が1個であると限られるわけでないことはいうまでもない。一筆の土地を複数の区画に区切って区画毎に借地契約を締結することは可能であるし、その実例も多い。さらに、このことはあまり理解されていないようであるが、契約書が一通であるからといって、当然に法律上も契約の個数が1個になるわけではない。一通の契約書で複数の契約を締結することは可能であり、(あまり意識されていないかもしれないが)実際にもその例は結構多い。典型例は、同一人間で貸金契約を締結し、同じ契約書で担保権設定も合意するケースである。

  なお、逆に、1個の契約の内容(要素)を複数の契約書に分けて規定したとしても、契約の個数が複数になるわけでもない。たとえば、賃貸借契約書では「賃料については別途定める」と規定しておき、別の契約書で賃料額を定めても、賃貸借契約は2個にはならない。

  つまり、AとBの借地契約は、借地人は一人であり契約書は一通であるものの、目的土地が明確に二つに分かれておりかつ契約期間が別々に定められていることからして、法律上は、もともと借地契約が2個あるものと考えるべきであり、単に、2個の契約を一通の契約書で同時に締結したものにすぎない。借地契約(借地権)が1個なのに契約期間(借地権の存続期間)が複数あるということは、理論上ありえない。

  したがって、C及びDの依頼に応じることは、1個の借地契約を2個の契約に分割することになるわけではなく、もともと2個あった借地権のうちの1個をCが、もう1個をDが、それぞれ単独で相続するというだけのことにすぎない。ただし、賃料については、土地全体についての賃料を甲部分と乙部分の面積で按分して算定するのが合理的であろう。

  なお、借地人に相続が発生した場合、共同相続人のうちの誰が借地権を相続するかについては、共同相続人間の遺産分割協議によって自由に決めることができ、貸主の承諾は不要であるし、貸主はその決定について異議を述べることもできない。