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2022/08/16 光輪の世界

BH

 私は,2021年11月上旬に白内障の手術を受けた。数年前から,両眼にやたらに陽射しが眩しくなるなどの白内障の症状が出始めていたところ,これが徐々に進行し,眼に映る全体にくすんだ色合いの靄がかかるようになり,視力も落ち,特に夜間はこの傾向が顕著に現れるようになった。それで,かかりつけの眼科医からそろそろ手術をしましょうと勧められ,三井記念病院を紹介された。同病院では眼の状態について細やかな事前検査をした結果,白内障がかなり進行している上,私の場合この状態で放置すると急性緑内障を発症し失明する危険があるとの診断であった。手術をすればこれらの症状,危険は解消される,更に,手術は生来の水晶体を吸い出して取り除き,新たに人工のレンズを装着するのであるが,レンズの性能次第(そこそこ高額で保険対象外)で老眼のみならず乱視も矯正できる等々の説明を受けた。ただし,副作用もあり,個人差はあるが光に対する眩しさ消えず,特に夜間自動車のライトなどが眩しい上に何重にも見え,自動車の夜間運転に支障を来す(一定の程度を超える光源に対しては輝度に応じて光源と同色の多重の光輪が見える症状が避けられない。)との説明があった。しかし,そうした負の副作用より,手術の効果が断然優ると判断した私は,早期の手術を選択した。

 手術は,病院が遠いため入院(三泊四日)し,初日に左目を,翌日に右目を実施した。手術に要する時間は白内障の症状等眼の状態によるが,私の場合左右いずれも5分かそこらの時間内で終了した。左目の手術を終えたその夜,保護眼帯を外して最初に目に映った16階の病室からの東京の下町の夜景は,こんなにも明るく,遠くまで鮮明に見えるのかと予想を超える効果に,何ともいえない嬉しさがこみあげてきた。術後最初の感激の時であった。なお,その時点では,まだ光輪の現象は認識できていなかった。翌日右目の施術を負え,更にその翌日,術後の状態について診察を受け,順調な経過であるとのことで,その日の午後退院し,翌日は外出せずに自宅で静養した。

こうして,手術から3日後に,防護眼鏡をかけて出勤したが,格別の支障はないばかりか,事務所内の人も物もすべてがくっきりと明るく見えるし,何と眼鏡(必携であった老眼と乱視の2眼鏡)なしで六法全書の字も明瞭に読めるようになっており,これはもう信じ難い大感激であった。そして,次の驚きが光輪現象である。夜になって,帰宅のため,電気ビルから仲通り側に出た瞬間である。目の前の街路樹のイルミネーションのすべてが,鮮やかなライトブルーの光輪で縁取られてキラキラ輝いており,私が初めて目にする光輪の世界であった。それは,朧げに想像していた後遺症のマイナスイメージとはおよそ程遠い幻想的な光景であった。ところが,次いで目を晴海通りに転じた時,交差点の信号の赤,青,黄色がそれぞれの色で幾重もの光輪(光源の色調の輪で,輪の数は光源の輝度による)となって輝いており,更に,行き交う自動車のライト(特に前照灯)は猛烈に眩しい上に,十重二十重の大光輪となって容赦なく襲いかかり,目を眩ませてしまうのであった。ああ,これが光輪の副作用かと理解し,その瞬間,夜間の自動車運転は極めて危険であり,断念すべきであると瞬時に決断した。

 さて,肝心の手術の効果であるが,術後に発症していたしつこい飛蚊症も数か月後には消失し,目の焦点距離合わせにも慣れ,術後8か月経過した現時点での自己評価は,副作用を考慮しても,十二分に満足できるものである。白内障は治癒し,急性緑内障の危険も消滅した。その上に,眼鏡は全く不要となったのである。裸眼で左右の視力が共に1.2に回復し,更に,あれほど強度であった乱視が全く眼鏡不要なまでに矯正されたのである。手術から数日後に満月を迎えたが,仰ぎ見る天空に浮かぶ満月は鮮明に我が目に映り,くっきりと一個と認識できた。それまで,私の目に映る満月とは真ん中に一個とその両脇下にそれぞれ満月の半分がくっついたいびつな姿であったが,それがくっきりと一個のまん丸い満月の姿となったのである。

さらに,月にも素敵な光輪現象が生じるというおまけがあるのである。あたかもサンゴ礁(リーフ)に囲まれたエメラルドグリーンに浮かぶ南海の島を上空から見るがごとくに,天空に周囲をきれいな海とリーフに囲まれた満月が浮かんでいるのである。その上,大仰に,リーフの周囲からは宇宙に向かって放射状に光の針が無数に伸びており,壮大な天体ショーを見るようである。それが,術後の私が目にした満月であった。その後,半年以上経過した頃から,私の目に映る月は,満ち欠けに従って形は変わるが,リーフとブルーやエメラルドグリーンの海に囲まれたように浮かぶ様々な形に見え,そのいずれもが実に見事な風情を見せてくれるのである。光輪現象は,一方で夜間運転を断念させたが,私には夜間運転は不要であるから,日常生活を営む上ではこの光輪現象は何の苦痛もなく,大歓迎である。

 以上が,私の白内障手術の顛末である。長くなり恐縮ですが,これから白内障の手術を受けられる方々の不安を取り除く参考になればと願う次第です。