2016/08/15 共有の権利関係について
弁護士 59機 横 田 卓 也
1 共有の権利関係の基本的事項
(1) 物を共有している場合、各共有者は、共有物の全部について、持分に応じて使用することができます(民法249条)。
ただし、現実に各共有者が共有物の全部を自由に使用することはできませんので、具体的な使用方法については、共有者間の協議で決める必要があります。
(2) また、共有物の管理に関する事項は、持分の過半数で決める必要があり(民法252条本文)、共有物に変更を加える行為をするには共有者全員の同意が必要です(民法251条)。ただし、共有物の保存に関する事項は各共有者が単独で行うことができます(民法252条但書)。
例えば、共有物に関する貸借契約の解除は、管理に関する事項と解されており、また、土地の造成や建物の増改築などは共有物の変更に当たると考えられます。
(3) 各共有者が有する共用持分自体は、各共有者が自由に処分(譲渡、担保設定等)することもできますが、共有物全体の処分は共有者全員で行う必要があります。
(4) 共有者は、その持分に応じて、その共有物に関する管理の支払い、その他共有物に関する負担を負います(民法253条1項)。また、共有者の一人が他の共有者に対して、共有物に関して債権を有するときは、その持分の特定承継人に対しても権利を行使することができます(民法254条)。
(5) 共有者の一人が持分を放棄したとき、又は、死亡して相続人がいないときは、その持分は、他の共有者に帰属することとなります(民法255条)。
2 共有物の分割
以上のように、共有物は、共有という性質上当然のことではあるものの、単独で自由に使用することができるわけではありませんし、他の共有者との関係で様々な権利関係を生じ得るものであり、共有関係の解消を希望する者が現れることが想定されます。
例えば、もともとは共有者間の関係が円満であり特段の弊害がない場合でも、共有者に相続が発生することにより、共有者間の人間関係が変わり、円満な関係が築けなくなり、共有関係を解消したいと考えることもあるでしょうし、中小企業のオーナーが事業承継を考えるときに、事業用資産が共有となっている場合、自らがオーナーであるうちは問題がなくても、後継者がオーナーになったときには弊害が生じ得るということは考えられ、そのような場合には共有関係を事前に解消しておきたいと考えることもあるでしょう。
このような場合に共有関係を解消する手段として、共有物分割請求の制度があります。
すなわち、各共有者は、いつでも共有物の分割を求めることができ(民法256条1項)、共有者間の協議により共有物を分割して共有関係を解消することもできますし、さらに、共有者間で協議が調わないときは、裁判所に分割を求める訴訟を提起することができます(民法258条1項)。
訴訟で判決となった場合、共有物を現物のまま分割する「現物分割」が原則であり、現物分割ができないとき、または現物分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所の競売で共有物を売却し、その売却代金を分割(代金分割)することになります(民法258条2項)。
さらに、判例上、共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、共有物の価格が適正に評価され、共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、他の者には持分の価格を賠償させる価格賠償によることもできると解されています。
3 共有物分割の禁止の合意
以上のとおり、共有者は、いつでも分割請求できるのが原則ですが、共有者全員の合意により、5年間を超えない期間内に限り、分割をしない旨の合意をすることもできます。5年間を超える期間の分割をしない旨の合意をすることはできませんが、5年間を超えない期間であれば、共有者全員の合意により分割しない旨の合意を更新することができます。
4 最後に
共有の権利関係の基本的事項や共有物に解消について簡潔に述べましたが、実際には不動産で共有が問題となることが多いと思われるところ、一口に共有といっても、そう単純なものばかりではなく、複数の不動産が一体として使用され、不動産ごとに様々な共有関係になっているなど、権利関係が複雑化している場合も多くあろうかと思います。そのようなときに共有関係の解消を考える場合、そもそもどのように分割するのが相当であるのか、法律上どのような手段を採ることができるのかなど悩ましいこともあろうかと思いますので、まずは当事務所までご相談いただければと思います。