2013/10/17 反社会的勢力に関する対応
週2で銀行に通う弁護士
昔から,反社会的勢力(特に暴力団)と関係はもたない,という一般的な社会の認識はあったように思うが,特に近年,反社会的勢力に絡んだ企業の不祥事や国際的なマネーローンダリング阻止機運の高まりなどを受け,反社会的勢力との関係根絶がより一層強く叫ばれるようになった。
平成23年10月1日に東京都と沖縄県で暴力団排除条例が施行されたことにより全都道府県で同様の条例が施行されるに至り,これを契機として,反社会的勢力との関係根絶に向けた社会の目がより一層厳しいものになってきたことは周知の通りであろう(身近な例でいえば,反社会的勢力と密接な関係があるとされた芸能人が芸能界からの引退を余儀なくされた例や,反社会的勢力との関係の疑いを少しでも残す歌手らが年末恒例の歌番組から排除されたと報じられた例など)。
このような情勢の下,先日,某銀行が,系列ノンバンクとの提携ローンに関して反社会的勢力との取引防止・解消のための抜本的な対応を行わなかった等として,金融庁から業務改善命令を受けた。金融庁の報道発表資料によれば,行政処分の決め手は,(過誤により)反社会的勢力と取引関係をもったこと自体ではなく,反社会的勢力との取引関係があることを認識した後に,これら取引の解消や同様の取引防止に向けた適切な措置を講じなかったこととされている。
日頃,金融機関からの相談を受けている身として,暴力団関係者との取引関係が漫然と放置される事態が現実に生じたことは残念でならない。経緯の解明は,後日の内部調査や金融庁の検査・監督に委ねるとしても,事態を把握してから2年以上もの間,(役員か否かを問わず)誰かが顧問弁護士に相談するくらいの対応をしなかったのか。もし相談しなかったのならば,このような事態となる前に弁護士に相談するとの思いに至らなかったことが悔やまれてならない(通常の弁護士であれば,反社会的勢力の中でもまさに暴力団関係者と認定できる者との取引を漫然と放置するような助言はしないであろう)。
金融機関に限らず,昨今の企業は,反社会的勢力への対応について厳しい水準での行動が求められている。企業・事業者においては,昨今の厳しい社会の目を十分に認識していただきたい。昨今の情勢に照らせば,反社会的勢力との取引に関して適切な措置を講じなかったことにより,行政処分等を受けることがあるし,風評により事業に重大な影響を受けるおそれまで想定しておかなければならない。
法律や条例,監督官庁の監督指針等に照らして,反社会的勢力との取引を回避することはもちろんのこと,既存取引において,取引の相手方が反社会的勢力であることが判明した場合やその懸念がある場合には,相手方の反社会的勢力性の濃淡に応じて対応をよく検討し(反社会的勢力と一口に言っても濃淡があり,その濃淡に応じて取引解消に向けた対応が異なり得ることは,一般に認識されるところであると思われる。金融法務事情1979号47頁参照),具体的な対応について顧問弁護士に相談するなど,神経を尖らせて対応していくことを強く推奨する。