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2015/08/17 外国人の在留管理制度

弁護士 62期 石 川 貴 敏

1 少子化による労働人口の減少等もあり,現在の日本経済はもはや外国人の労働者なくしては成り立たないといっても過言ではなく,今後も日本に在留する外国人は増え続けることが予想されます。

  そこで,本稿では,日本における外国人の在留管理制度を概観したいと思います。



2 在留資格について

  在留資格とは,外国人が日本で適法に滞在するために必要な法律上の資格のことをいい,日本に滞在する外国人は,原則として,出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)の別表第1,第2が定める在留資格(全27種類)の中から1つを取得する必要があります(なお,いわゆる在日韓国・朝鮮人等は,入管法の特例法である「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」に基づき「特別永住者」とされ,いわゆる強制送還の理由となる退去強制事由(入管法24条)が限定されているなど,入管法上の在留資格である「永住者」と比べてより安定的な地位が付与されています。)。

  別表第1の在留資格が,いずれも当該外国人が日本で行う活動に着目して付与されるものであるのに対して(「高度専門職」,「経営・管理」,「留学」,「短期滞在」等),別表第2の在留資格は,当該外国人の地位に着目して付与されるものであり(「永住者」,「日本人の配偶者等」等),別表第1の在留資格の場合は,原則として,当該在留資格において想定された就労活動しか行うことができないのに対して,別表第2の在留資格の場合は,在留中の活動内容に制限がないなどの違いがあります。なお,別表第1の在留資格の場合であっても,資格外活動許可(入管法19条2項)を受ければ,自らの在留資格においてなし得る活動以外の活動によって報酬を得ることも認められるため,例えば,別表第1の「留学」の在留資格を有する外国人も,上記資格外活動許可を受ければ,一定の条件下でアルバイト等を行うことができます。

  「永住者」を除く在留資格には在留期間が設定されており,外国人は,在留期間内に在留期間の更新を行う必要があります(入管法21条)。



3 在留カード制度の導入

  平成24年7月に在留カード制度が導入され,3か月を超える在留期間が認められている外国人には,原則として,在留カードが交付されることになりました(入管法19条の3。同制度の導入に伴い,従来の外国人登録原票制度は廃止)。在留カードには,国籍,氏名,生年月日,住居地,在留資格,在留期間,就労制限の有無,資格外活動許可等が記載され(同19条の4第1項),在留カードの交付を受けた者には常時携帯義務が課されています(ただし,16歳未満の外国人を除く。同23条2項,5項)。なお,前述した「特別永住者」には在留カードは交付されず,特別永住者証明書が交付されます(常時携帯義務はありません。)。

  また,在留カード制度の導入に伴い,在留カード又は特別永住者証明書の交付対象となる外国人については,居住する市区町村で住民票が作成されることになりました。なお,戸籍については,従来と同様,外国人は作成することはできません。



4 不法就労について

  前述のとおり,外国人が日本で就労するためには,その就労に必要な一定の在留資格又は資格外活動許可を取得することが必要であるところ,これに違反した就労は不法就労とされ,退去強制事由に該当する可能性があります(入管法24条4号イ)。

  また,外国人に不法就労をさせた者には「不法就労助長罪」が成立し,3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し,又はこれを併科するとされており(入管法73条の2第1項),更に,行為者のほか業務主である法人又は自然人も処罰する旨の両罰規定も定められています(同76条の2)。

  なお,当該外国人が不法就労者であることを知らなかったとしても,そのことに過失が認められる限り(在留カード等によって就労が可能かどうかを確認しなかった場合は,過失が認められる可能性が高いと思われます。),処罰を免れることはできません(入管法73条の2第2項)。



5 以上のほかにも,外国人には日本人とは異なる様々な規制が存在し,また,外国人に関する法令及び入国管理局の取扱いは頻繁に変更されることから,外国人に関する法令の適用又は入国管理局の取扱いなどを検討する際には,弁護士等専門家に相談されることをお勧めします。