弁護士法人 小野総合法律事務所 ONO SOGO LEGAL PROFESSION CORPORATION

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2014/05/16 外国居住者や外国人を相手方とする競売等

パートナー 弁護士 芳村 則起

  当事務所は、従来より、取扱業務の範囲として、日本語、日本法に限定させていただいておりますところ、日本国外に転居した者の転居先住所が不明だったり、日本国籍を有しない者の相続調査が必要となる事案がここ数年増えてきました。

  このような場合、転居先の住所を調べたり、その相続人を確定したりするのに、なかなか苦労します。

   例えば、顧問先の金融機関の依頼により担保不動産の競売を申し立てる場合、競売開始決定に至るには、その債務者や担保不動産の所有者ら全員を相手方とし、その住所、氏名をもって特定する必要があります。相続が発生している場合は、相続人全員を相手方に含めて、その住所、氏名をもって特定する必要があります。

  また、競売手続を進行させるには、競売開始決定正本等が債務者や所有者ら全員に送達される必要があります。
  そのため、相手方の住所を調べたり、相続が発生している場合は相続人を全員確定したりする必要があり

ます。相手方の特定、及び、送達さえできれば、手続は進み、他に問題がなければ、期間入札、売却、配当へと進みます。



  相手方が日本国外に転居している場合は、日本の住民票には転居先の国名は記載されていても、その先の住所までは記載されていないことがあり、このようなときは、そのほかの方法により調査する必要があります。家族等の関係者に質問してみたり、弁護士会照会の方法によったりして調査し、結局、手を尽くしても判明しない場合は、わかっている最後の住所に基づいて申し立て、送達は公示送達の方法によることになります。

  外国の住所が判明した場合は、その住所宛てに送達をすることになり、その国によっては、費用や時間が相当程度かかります。相手方によっては、送達する書類を外国語に翻訳する必要がある場合もあります。



  相続人の確定については、日本人の場合は、戸籍謄本や除籍謄本等を取って、さかのぼっていくことにより、戸籍等の焼失等がない限り、相続人を全員確定することができます。もっとも、例えば、認知していない隠し子がいないかどうかということ等は、戸籍謄本類を取ってみただけでは確認し切れず、ほかに相続人がいないことを100パーセント確実に証明することまではできませんが、基本的に、裁判所も法務局も、戸籍謄本類で確認できる範囲の調査で足りるという取扱いのようです。

  これが外国人の場合は、容易ではありません。相続についての準拠法がどこの国の法律になるか、それが日本以外の場合、その国の法律を調べたうえ、相続人に該当する者を調査することになります。

  例えば、韓国のように日本の戸籍と同じような制度がある国の場合は、それを取り寄せたり翻訳したりして、相応の手間や費用を要しますが、何とか調べ上げることができます。

  それがない場合は、さらに困難です。例えば、妻や子等一部の相続人の存在がわかっている場合でも、それだけでは十分ではなく、それ以外に相続人が存在しないことを確認する必要があります。相続財産管理人の選任申立て(民法第952条)を検討してみましたが、一部でも相続人の存在が判明している場合は、「相続人のあることが明らかでないとき」とは言えず、選任申立ては認められないようです。

  その国の制度を調べる等して、その国や日本で可能な限りの調査をしたり、関係者に聞いてみたり、法務局と交渉したり、裁判手続を利用したりした末、ようやく相続を原因とする所有権移転登記をしてもらえ、競売開始決定に至った例もあります。

  上記のとおり、元々相続人全員を100パーセント証明することはできないので、できる限りの手を尽くすことによって、何とか認めてもらえたように思います。



  別の国になると、一から調べ直しの部分もありましょうが、成功例を参考にすれば、最終的には何とかなるのではないかと思います。

  このような相手方でお困りの場合は、ご相談いただければと思います。