弁護士法人 小野総合法律事務所 ONO SOGO LEGAL PROFESSION CORPORATION

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2019/07/15 天網恢恢疎にして漏らさず

サイドマウンテン

  最近,芸能事務所に所属している芸能人が,事務所を通さずに個人で仕事の依頼を受け,依頼者から直接出演料を受領したことが「闇営業」などと言われ,ニュースになっています。私はインターネットでしか事実関係を確認していませんが,上記事務所は,所属する芸能人ウン千人との間で契約書を取り交わしていなかったようで,そのことも注目の的となりました。





  もっとも,法律上,契約は一部の例外(保証契約など)を除いて意思表示の合致のみによって成立するのが原則ですので,必ずしも書面を取り交わす必要はありません。芸能人と芸能事務所との間のマネジメント契約も同様です。


  よって,本件で芸能事務所と芸能人との間で契約書が作成されていなかったこと自体は(社会的に非難されるかどうかはさておき),法的に問題があるわけではありません。





 しかし,契約書がないということは,具体的にどのような内容の契約を締結したのかが不明確になるということです。例えば,出演料の配分,芸能人の肖像の取扱い,不祥事を起こした際の損害賠償など,本来であれば当然に定めておくべきことを合意せず,なんとなーく「うちの事務所に入らない?」「入ります!」という,なあなあの流れで芸能人を所属させてしまえば,いつかトラブルが生じることは避けられなかったといえます。


  私はこのニュースを見たとき「え?契約書ないの??それなら個人が出演料全部もらってもOKかもしれないじゃん!」という感想を持ちました。獲得した仕事は全て事務所を通さなければならないとか,そもそも個人で営業を行ってはならないといった合意がされていない可能性があるからです(最終的には事実認定の問題になりますので,断言はできませんが)。


  なお,このような「闇営業」は,我々のような法律事務所でも起こりえます。しかし,さすがに法律事務所の場合は,例えば「個人事件不可」という条件や「個人事件可だが売上の何パーセントを事務所に支払うこと」といった条件が入所の際に明示されており,各弁護士はその条件に従って業務をしています。





  ということで,今回の「闇営業」事件については,芸能人が依頼者から出演料を直接受け取ったという行為自体は,マネジメント契約違反にはならない可能性があります。


  とはいえ,今回の場合は個人で獲得した仕事の依頼者が反社会的勢力であったようですので,その点が非難されるのは当然でしょう。やってはならないことや後ろめたいことは,隠そうとしても必ずばれてしまうということなのでしょうね。