2013/06/15 家事事件手続法施行について
弁護士 62期 山崎 悠士
1 平成25年1月1日,家事事件手続法が施行されました。
同法は,その名のとおり,夫婦関係,親子関係,あるいは相続関係等の家事事件の手続を定めるもので,従前,家事審判法において定められていた家事審判,家事調停の手続は,今後,同法に従って運用されることになりました(これに伴い,家事審判法は廃止されております。)。
2 上記のとおり,家事事件手続法施行前,家事審判や家事調停といった家事事件に関する手続を定めていたのは家事審判法でした。
家事審判法が制定されたのは,戦後間もない昭和22年のことであり,その施行以降,大きな改正はなされませんでした。しかしながら,この間,我が国社会は大きく変化し,それに伴い,家族のあり方は多様化してきました。また,個人の権利意識が高まり,裁判手続の公正や,裁判所の判断過程の透明化などが求められるようになった今日において,家事審判法は必ずしも時代に即したものではない,との批判が向けられるようになっていったのです。
3 家事審判法との違い
(1)上記のような批判を受け,制定された家事事件手続法は,手続保障の強化,利便性の向上,手続の明確化等を主要な指導理念として制定されており,家事審判法とは明確に異なる規定が複数設けられております。
以下,家事審判法と家事事件手続法の違いを,いくつかご紹介します。
(2)申立書の写しの送付
家事審判,家事調停の申立ては,いずれも申立書を家庭裁判所に提出してしなければなりません。
この点,家事審判法では申立書の写しの送付に関する規定は存在しておらず,相手方が申立書の内容を確認するためには,後述する記録の閲覧を申請する必要がありました。
一方,家事手続法では,相手方のある事件では,原則として申立書の写しを相手方に送付しなければならないことが定められました。このように,相手方において申立書の写しの送付を受けることで,申立ての内容をよく把握し,自らの言い分を準備することが可能となるものであり,この点において家事審判法下の手続と比べより公正な手続を目指したものであるということができます。
(3)当事者による記録の閲覧・謄写
家事審判法では,家庭裁判所が「相当と認めるとき」記録の閲覧,謄写を許可することができるものとされており,記録の閲覧・謄写については裁判所の広い裁量に委ねられていました。
一方,家事事件手続法では,家事審判の場合については,当事者からの請求は原則として許可するものと定められました(ただし,家事調停の場合は,家事審判法と同様,家庭裁判所が相当と認める場合に許可されるものとされています。)。
(4)電話会議・テレビ会議システムによる手続の創設
家事審判法下における家事審判,家事調停は,当事者が裁判所に出頭することが前提とされた手続でした。
しかしながら,全ての関係者が事件の係属する裁判所の近隣に居住しているとは限らず,遠方に居住している当事者にとっては,出頭そのものが大きな負担となり,実質的に十分な活動ができないとの問題点が指摘されていました。
この点,家事事件手続法では,当事者が遠隔地に居住しているときその他相当と認めるときには,当事者の意見を聴いて,電話会議やテレビ会議システムを利用することが可能とされております(ただし,離婚や離縁の調停を成立させる期日については,電話会議等を利用することはできません。)。
このような規定の新設は,より利用しやすい手続に向けた試みの一つであるということができるでしょう。
4 家事事件手続法の適用を受けるのは,同法が施行された平成25年1月1日以降に申し立てられた事件であり,同日時点で既に係属していた事件については,従前と同様,家事審判法の適用を受けることとされております。
新法の施行により,家事事件手続の実務は大きく変わることとなります。この点,当事務所では家事事件も多数取り扱っており,新法への対応の準備も十分に整えておりますので,お困りの際にはお気軽にご相談ください。