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2020/06/19 株主総会の開催方法

弁護士 58期 松 村 寧 雄

1 株主総会の開催の必要性


  株主総会は,株式会社であればその規模の大小を問わず,会社の意思決定機関として必須のものです。公開会社の場合には,それなりにノウハウも蓄積されていますので,比較的スムーズに執り行なわれることが多いのですが(それが,担当者様による準備の賜物であることは理解しております。),非公開会社の場合には,会社法の許容する会社の機関設計の多様さとも相俟って,実際に株主総会を開くとなると,どのような手続が必要となるか,わかりにくいところがあるように思います。

  実際のところ,書面のみで株主総会議事録を作成し,総会を開催したとされているという方も多いと思われるところ(会社法の定める要件を満たしていなければ,議事録作成だけでは総会を開いたとは言えません),何かのきっかけで総会を開かなければならない場合に慌てなくとも良いよう,以下,中小の非公開会社を念頭に,総会の開催方法を確認したいと思います。




2 開催前の準備


  まずは,総会をいつ,どこで,何のために行うのかを,取締役会において決定する必要があります。取締役会を設置していない会社においても,取締役が複数いる場合には,その過半数をもって意思決定しなければなりません(会社法348条2項3項)。

  総会の開催を決めると同時に,総会に出席できる株主は誰かを確定させる必要があります。株式は自由に譲渡できることが前提ですから,時期によって株主が変更されている可能性がありますので,基準日を設けることで株主を確定させるのです(法124条1項)。通常は,定款に毎事業年度の最終日を基準日として定め,そこから法定の3か月以内に総会を開催し,計算書類を承認する手続をすることとしております。もっとも,定款に規定された基準日で対応できない場合には,改めて基準日を設定する必要があり,この場合には,基準日の2週間前までに公告という手続を執る必要があります(同条3項)。

  定時株主総会では,事業報告と計算書類の承認手続が必要とされますので,これらの作成を行わなければなりません。監査役設置会社においては,当該報告書や計算書類等の監査を行う必要があり,取締役会設置会社においては,さらに,取締役会でこれらの承認手続をも行う必要があります(法436条)。作成された事業報告書や計算書類等,監査報告については,総会の2週間前から本店に据え置く必要があります(取締役会を設置していない会社は1週間前)(法442条1項)。

  なお,事業報告書については,会社法施行規則118条により細かく定められていますが,内部統制システムの整備義務があるのは大会社のみであることなどから,そうでない中小の非公開会社などでは,実際に必要とされる報告事項は,当該株式会社の状況に関する重要な事項が主なものとなろうと思われます。




3 招集通知の発送


  総会の準備が完了すると,次は,基準日における株主に対して招集通知を送付します。

  招集通知は,総会の2週間前までに,発送する必要がありますが(あくまで発送であり,到達が要件ではありません),公開会社ではない株式会社については,1週間前までに,さらに当該会社が取締役会を設置していない会社である場合において定款でさらにこれを下回る期間を定めている場合にはその期間前までに発送することで足ります(法299条1項)。

  招集通知と併せて,取締役会設置会社においては,事業報告書及び計算書類等を株主に提供する必要があります(法437条)。取締役会を設置していない会社においては,招集通知に事業報告書や計算書類等を添付する必要はありません。

  なお,議決権を行使できる株主の全員が同意すれば,上記の招集手続は不要で(法300条),全ての株主が集まった機会に,そこで会議を開くことに全員が同意すれば,招集手続がなくとも総会は成立するものと解されています。




4 開催当日


  このようにして株主総会の当日を迎えますが,総会そのものついては,定足数として,議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席していれば開催が可能であり,出席株主の議決権の過半数の賛成があれば決議は成立します(法309条1項)。

  なお,定足数の要件は,定款で除くことが可能で(したがって,議決権を有する株主1名のみということも可能),特別決議の定足数も定款で3分の1以上まで下げることが可能です(法309条)。

  さらに,取締役または株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において,当該提案に対して,株主全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示を示したときは,それを決議とみなすことが可能で,総会の開催そのものを省略することが可能です(法319条)。

  株主数や役員数が少ない会社においては,上記の方法により総会の開催を省略することが便宜といえるでしょう。




5 開催後の手続


  総会が無事に終了したあとは,議事録を作成するとともに,貸借対照表を公告する必要があります(法440条1項)。公告方法を官報または日刊新聞紙に掲載する方法を執る会社においては,貸借対照表の要旨で良いとされています(同2項)また,貸借対照表の内容である情報を電磁的方法(要はインターネット上)に,定時株主総会後5年間継続して不特定多数のものが情報を得られる状況にして置くことでも構いません(同3項)。

  この手続は,会社の大きさや公開非公開の区別なく適用されるものですので,注意が必要です。




6 まとめ 


  以上が株主総会の開催方法でした。株主間において同意が得られているような場合は,総会自体を開催しなくても良い反面,そうでない場合は手続をきちんと履践しなければなりません。法は手続を簡素化できる方法を提示していますので,うまく利用して,適法に総会を開催するようにしましょう。