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2025/06/10 歴史は繰り返さない

癸亥

 何日か前に、令和6年に生まれた子の出生数が初めて70万人を下回ったというニュースに接した。

 なるほど昨今の少子高齢化にさらに拍車がかかっているのだなと思い記事を眺めていたが、添付された過去の出生数の棒グラフを見てみると、1966年だけ前後の年に比べて不自然に出生数が落ち込んでいることに気づく。

 政府統計によれば、前年である1965年の出生数が1,823,697人、翌年である1967年が1,935,647人であるのに対し、1966年は1,360,974人と、明らかにこの年だけ落ち込んでいる。実に前年比約25%ダウンである。

 どうしてこのようなことが起きたのかというと、1966年は干支(十干十二支)でいうところの「丙午(ひのえうま)」にあたり、曰く、昔から丙午に生まれた女性は気性が激しく夫の命を縮めるなどと言われていたようで、そのような迷信から、その年の出産を控えた人が多かったためらしい(なお、その前の丙午にあたる1906年も、同様に出生数の落ち込みがみられたようである)。

 もちろん、「丙午に生まれた子は・・・」などという迷信に科学的根拠は一切ないし、そんなことは、1966年頃のカップルもわかっていたはずであるが、それでも当時、「来年は丙午だから、子供は作らないでおこう」と考えた人が多くおり、それが統計学的に有意に(むしろ顕著に)表れたことに驚きである。迷信ってすごいなと。

 そのようなことを思いながら気付いたのだが、ご存じのとおり干支(十干十二支)は60年周期なので、来年(2026年)も丙午である。

 冒頭で述べたとおり、昨今は出生数が右肩下がりで減少しているが、そのような中で丙午を迎えるとなれば、出生数は70万人どころか、(一時的にせよ)50万人程度まで落ち込んでしまうのではなかろうか。

 が、本当にそうか。

 1966年当時は、平均初産年齢が25.7歳程度と若く(なお、令和6年は31.0歳だそう)、1年待ったところで特段支障のないカップルが多かったのかもしれないが、現在は高齢出産が増えており、30代中盤以降の世代からすれば、母子へのリスクを考えれば1年どころか数か月待つのも惜しく、正直言ってそんな迷信など気にしていられないという人も相当数いるように思われる。

 また、当時は周りの親族などから「来年の出産はやめた方がいいよ」と強く言われたカップルもいたのかもしれないが(そして子もそれに従っていた)、現在は、自発的にせよなんにせよ、出産という人生における重要なイベントを、迷信のみを理由に変更又は中止しようという人は必ずしも多くない気がしている。

 そうすると、21世紀になった現在、今回もいわば「産み控え」なる事態が、前回と同程度の割合で顕著に生じることまではないのではないか。むしろ、みんなが出産を控えれば保育園に入りやすくなるという恩恵を受けられるんじゃないかとすら思う。

 答えは2027年になってみないとわからないが、そのときが来たらあらためて本記事を振り返ってみたい(覚えていれば)。