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2017/02/16 民事訴訟の流れ ー訴えの提起から第一審判決までー

弁護士 63期 横 山 裕 一

 我が国では,原則として訴訟代理人の資格を弁護士に限定しておりますので(民事訴訟法(以下略)第54条第1項),多くの弁護士にとって訴訟対応は,主要な業務の1つとなっています。そこで今回は,訴えの提起から第一審判決までの大まかな流れを追ってみたいと思います。





1.訴え提起準備から訴状提出まで


  訴えを提起する場合,まずは訴状を作成します。訴状には,当事者及び法定代理人の名称のほか,請求の趣旨と請求の原因を記載しなければなりません(第133条第2項)。ここにいう請求の趣旨とは,原告が求める判決主文を指し,請求の原因とは,請求の趣旨を基礎づけるための事実を指します。

 訴状が完成すると,書証の写しとともに管轄裁判所に提出します。訴状や書証の写しは,裁判所用の正本1通と,被告の数に応じた副本を提出しなければなりません。正本には,請求内容に応じた収入印紙を貼付しなければならず,裁判所が郵送手続きを取るための郵券も予納する必要があります(東京地裁の場合6000円(被告が1名の場合))。

 なお,訴状等の提出は,郵送でも持込みでも可能ですが,東京地裁に持込む場合は,受付で銀行窓口のように番号札を引いて,呼ばれるまでしばらく待たされます。





2.訴状提出後から第1回期日まで



 訴状等を提出すると形式面の審査があり,問題なければ事件番号が付与され,担当部に割り振られます。

 事件番号は,通常訴訟事件の場合「平成●年(ワ)第●号」というように,訴え提起が行われた年と,その年の何番目に訴え提起されたかによって事件番号が決まります((ワ)というのは,地方裁判所における通常訴訟事件を指す符号です)。担当部は,東京地裁の場合,医療過誤や建築紛争等の専門部も設けられていますが,貸金の請求や不動産の明渡し等の一般事件であれば,通常部と呼ばれるいくつかの部署に順番に事件が割り振られます。当事者が担当部や担当裁判官を選ぶことはできません。

 事件が割り振られると,書記官から原告宛に連絡があり,第1回期日の日程調整が行われます。第1回期日が決まると,期日呼出状という書面とともに,訴状や書証の写しの副本が被告に送達され,被告としては,このときにはじめて自分が訴え提起されたことを知るわけです。





3.第1回期日後



 第1回期日については,上記のとおり原告と裁判所の都合で決められますので,仮に被告が出頭できない場合でも,事前に答弁書を提出しさえすれば,裁判所は,それを法廷の場で陳述したものとみなすことができます(第158条)。そして,答弁書で被告が原告の請求を争うことを明らかにすれば,第2回期日以降,当事者間で主張,認否・反論,立証が繰り返されます。なお,訴訟の進行については,裁判長に広範な訴訟指揮権が与えられており,場合によっては判決の前に,和解協議の席が設けられることもあります。

 他方,期日呼出状の送達を受けたにもかかわらず,第1回期日までに被告が答弁書を提出せず,期日にも出頭しない場合は,訴状の内容を全て認めたものとみなされるおそれがあります(第159条)。この場合,請求の趣旨どおりの判決が下さるおそれがありますので,注意が必要です。





4.判決



 当事者の主張立証が尽くされ,かつ和解協議もまとまらない場合は,口頭弁論が終結され,判決が言い渡されます。判決言渡期日には,当事者が出頭する必要はありません。追って判決書が郵送されてきますが,判決主文のみであれば電話で教えてもらえることもあります。

 判決書を読んで,内容に不服がある当事者は,控訴を検討することになりますが,控訴期間は,判決書の送達を受けた日から2週間ですので(第285条),あまり悩んでいる時間はありません。当事者双方とも控訴しなければ,第一審判決が確定します。





5.おわりに



 以上が,訴え提起から第一審判決までの大まかな流れです。

 ところで,冒頭に述べたとおり,訴訟代理人の資格は原則として弁護士に限られますが,稀に代理人を立てず,自ら訴訟対応している当事者を目にします。しかし,主張の組立て方にもテクニックがあり,そのような当事者の法廷でのやりとりを聞いていると,必ずしも的確な主張ができていないことも多いように感じます。もちろん,訴訟沙汰にならないことが一番ですが,どうしても訴え提起しなければならない場合や,ある日突然期日呼出状が送達されてきた場合には,専門的な知識やノウハウを有している弁護士にご相談いただければと思います。