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2016/07/15 瑕疵担保責任について(主に住宅に関して)

パートナー 弁護士 湯 尻 淳 也

1 せっかく購入した住宅に欠陥があった場合,売主に対してどのような請求ができるかを考えていこうと思います。今回検討するのは,売買物件が購入後に損傷するなどした場合に問題となるアフターサービスとは異なり,物件の引渡し時点ですでに欠陥があった場合のことです。




2 このような場合,買主は売主に対し,瑕疵担保(かしたんぽ)責任を追及することになります。この瑕疵担保責任は,対象物件が契約上予定された品質・性能を欠いている場合(瑕疵の存在)に,そのことが通常要求されるような注意力を働かせたにもかかわらず発見できなかったような場合(隠れたる瑕疵である場合)に追及することができます。

   瑕疵担保責任の効果は,損害賠償の請求が原則ですが,瑕疵の存在により契約の目的が達成できない場合には,契約の解除も可能となります(民法第566条第1項,第570条)。




3 それでは,契約上で「瑕疵担保責任を免除する」との約定がなされていた場合はどうでしょうか。結論からいうと,このような特約も原則としては有効です。

  しかし,宅地建物取引業者が売主の場合は,責任の存続期間を目的物の引渡しから2年以上となる特約をする場合を除き,民法に規定するものよりも買主に不利となる特約をしてはならないとされており,これに反する特約は無効とされます(宅建業法第40条第1項)。よって,不動産業者等から購入した場合は,最短でも2年間は責任を追及できることになります。

  なお,不動産業者が売主の場合に,上記の条項を無視して「瑕疵担保責任は免除する」との特約を設けた場合,瑕疵担保責任の存続期間はどうなるでしょう。この点については,上記の「引渡しから2年」になるのではなく,民法上の原則によることになります(瑕疵を発見してから1年以内)。

  なお,新築住宅の売買や請負に関しては別の法規制があります。すなわち,新築住宅の一定の部位(建物構造上主要な部位等)については,住宅の品質確保の促進等に関する法律(いわゆる品確法)により,売主・建築業者は,最低でも10年の瑕疵担保責任を負うことが義務化されています。

  一方,個人間で売買契約を締結したような場合は,特約により瑕疵担保責任を免除することは自由であり,契約にあたってはこの点を注意する必要があります。




4 例えば購入した住宅の敷地から土壌汚染が発見された場合,その汚染が売買取引の時点では法律上も規制されていないし,取引観念上も一般にもさほど問題とされていなかったにも関わらず,その後の法律で規制されるに至った場合はどうなるのでしょうか。

  この問題については最高裁判例があり(最高裁平成22年6月1日判決),瑕疵担保責任を否定しています。すなわち,瑕疵に該当するか否かは,あくまで取引当時の法規制,取引観念ないし当事者の意思解釈から判断すべきということになります。




5 最後に瑕疵担保責任の時効について触れておきます。民法上は責任の存続期間については,「瑕疵を発見してから1年以内」とのみ規定されています。これだけを見ると,契約から何十年経ったとしても,瑕疵を発見してから1年以内ならば瑕疵担保責任を追及できるようにも読めてしまいます。

  しかし,この点については,最高裁平成13年11月27日判決で,「瑕疵担保による損害賠償請求権には民法167条1項の消滅時効の規定の適用がある。この消滅時効は引渡しの時から進行すると解される」との判断が示され,瑕疵担保責任にも一般の消滅時効の適用があるとされました。すなわち,一般の売買については引渡しから10年,商人間売買であれば引渡しから5年の消滅時効(商法第522条)が適用されることになります。

  ただ,時効期間については以上のとおりですが,取引から長期間が経過すると,瑕疵の存在の立証(契約当時からその不具合があったかどうか)が困難になることも想定されるので,瑕疵の存在については可能な限り早期に発見し,適切に対応することが重要です。