弁護士法人 小野総合法律事務所 ONO SOGO LEGAL PROFESSION CORPORATION

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2014/06/16 自転車に関する法律の改正等について

パートナー 弁護士 湯尻 淳也

1 昨年12月から、自転車に関する道路交通法(以下「法」といいます。)の改正が施行されたのをご存知の方も多いと思います。今回はこの法律改正を含む、自転車に関する法律について解説してみようと思います。


2 昨今は自転車ブームとも言われ、競技用自転車が街を走るのを見る機会は以前と比べて格段に増加しています。それとともに、自転車に関係する事故も増加しているようです。その一因には、自転車の乗り方や、自転車そのものについてのルール違反が横行していることがあげられると思います。今回の法改正も、その点に対応するものといえます。


3 まず、自転車等の軽車両が通行できる路側帯は、道路の左側部分に設けられた路側帯に限られることとなりました(法第17条の2)。こう書いても少し分かりにくいので、解説をします。

  自転車も「軽車両」という「車両」に分類されますので、車道の左側を走ることが原則となっています。しかし、これまでは車道の路側帯については、対面通行が可能とされてきました。しかし、日本の道路に十分な幅の路側帯があることは稀で、対面通行をしていては自転車同士の衝突などの事故が起こる懸念があるので、改正法は、路側帯についても車道の左側を通行することが義務付けられました。要するに、道路においては、路側帯を含め、例外なく左側を通行しなければならないことになったわけです。

  これに違反したときには、違反すると3ヶ月以下の懲役か5万以下の罰金が科されることがあるので、注意が必要です。



4 しかし、日本の車道は狭いところも多く、路側帯が十分に取られていないことも多いです。このような状況のもとで車道通行の原則に例外を設けないのは実態に合っておらず、かえって危険な事態となることも想定されるため、道路交通法はいくつかの例外規定を置いています(法第63条の4)。

  すなわち、?歩道に自転車通行可の標識がある場合、?13歳未満の子どもや70歳以上の高齢者、身体の不自由な人が運転するとき、?車道または、交通の状況に照らしてやむを得ないと認められたときに限り、自転車は歩道を通行することができます。

  そして、上記の場合に歩道を通行する場合においても、歩道の車道寄りを徐行しなければならず(歩道に自転車通行指定部分がある場合はその部分を通行)、自転車の通行が歩行者の妨げになるような場合には一時停止しなければならないこととされています。すなわち、歩道においては歩行者優先です。

  通勤時間帯などに、歩道を猛スピードで走って歩行者を縫うように抜いていく自転車をよく見かけますが、もちろん法違反と評価されることになるわけです。これについても、3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金という刑事罰があります。



5 昨今は「ピスト」と呼ばれる固定ギアの自転車も流行しています(競輪等のトラック競技に使用される種類の自転車です。)。ピストは競技においてはブレーキを装着しませんが、公道等においてはもちろんブレーキを装着しなければなりません。しかし、残念ながらブレーキを装着しない「ノーブレーキピスト」に乗る者が後を絶ちません。そこで改正法は、ノーブレーキピストに代表される制動装置不良自転車の運転を防止するため、警察官が基準に適合したブレーキを備えていないと認められる自転車を停止させて検査を行い、応急のブレーキ整備や運転継続の禁止を命令できるようになりました(法第63条の10)。



6 その他にも、無灯火や並進、ながら運転等も法律で禁止されているのは言うまでもありません。また、歩行者を退かせるためにベルを使用する人がよくいますが、警音器(ベル)は、危険を避けるときのみに使用するものであり、そのような必要がない警音器の使用は禁止されています(法第54条第2項)。この警音器の乱用には刑事罰があります(2万円以下の罰金又は科料)。



7 日本の車道や歩道自体が自転車の通行に十分に対応していないという根本的な問題はあるのですが、以上の法の趣旨をよく理解して、安全な自転車運転を心がけたいものです。