弁護士法人 小野総合法律事務所 ONO SOGO LEGAL PROFESSION CORPORATION

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2016/10/15 裁判官に対して思うこと

パートナー 弁護士 近 藤   基

  本欄に書く内容としてはややふさわしくないかもしれないが、日ごろ裁判官に対して思うこと、感じることを書き出してみた。当事者本人としてまたは企業等の法務担当者として実際に訴訟に関与したことがある方には、同感してもらえるところもあるのではないかと思う。




1 書証


  当事者(弁護士)が提出した書証を、証拠としての関連性・必要性をまったく考慮せずに、なんでもかんでもそのまま採用する裁判官が多い。しかし、民事訴訟においても、関連性・必要性のない書証は本来取り調べるべきではないはずである(民事訴訟法181条1項)。裁判官は、提出された書証はとりあえず記録に綴じておき、不要であれば読まなければよいと思っているのかもしれないが、弁護士はそうはいかない。相手方から出た書証はコピーをとって依頼者に送らなければならないし、書証である以上は記録に綴じて、原則として期日に毎回持ってくる必要がある(記録が無駄な書証で重くなって大変である)。




2 声


  声が小さく、こちらが当事者席にいてもよく聞き取れない裁判官がいる。ましてや傍聴席からは裁判官の言っていることが理解できないはずである。そのような裁判官は、そもそも、傍聴席にいる者にも聞き取れるようにしゃべるという意識をまったく持っていないと思われる。しかし、裁判の公開は憲法上の要請であり(憲法82条1項)、裁判の公開とは、本来は、単に誰でも傍聴できるということだけではなく、傍聴席にいる者が理解できるように裁判を行うという意味を含むはずである。




3 尋問


  尋問の際に、証人や本人に対し、当事者のことを「原告」「被告」と呼ぶ裁判官がときどきいる(特に若い裁判官)。たとえば「それでは、原告は○○と考えたのですか?」「××と決めたのは、原告ではなく被告の方なのですか?」等。しかし、素人は、「原告」「被告」と言われても、とっさにどちらが原告でどちらが被告なのかわからなくなるものである。現に私が担当した事件でも、当方の証人が、裁判官からの質問に対し明らかに原告と被告を誤解して、反対の返事をしてしまったケースがあった(しかも、その証言が誤解であることを示すべく、再々主尋問を行おうとしたら、裁判長から制止された)。小難しく「原告」「被告」などと呼ばずに、「○○さん」「××銀行」などと固有名詞で呼んでやれば素人はわかりやすく誤解しないものである。

  余談だが、弁護士にも、証人のことを「証人は」と呼ぶ者が結構いる。「証人はこの書類を見たことがありますか」等。しかし、一般の日本人で、自分のことを「証人は」と呼ばれてすぐに自分のことであると実感できる者がいったいどれだけいるであろうか。一瞬きょとんとするのが常である。そのような弁護士は英米の法廷の真似をしているのかもしれないが、単なる英米法かぶれである。「あなたは」とか名前で「△△さんは」と呼んでやればよいのであり、わざわざ「証人は」ともったいぶった呼び方をする実益は何もない。




4 判決


  無用に長い判決書きが多い。理由部分が長いのはともかく、事実認定部分がやたらと長い判決が多い(無駄に長い準備書面を書く弁護士も多く、問題であるが)。結論を導き出すのに必要のない事実であっても、証拠上認定できる事実はとにかくすべて認定して書いておこうと思っているのではないかと思われる。控訴された場合に高裁で事実認定漏れを指摘されるのを恐れてのことではないかと思えてしまう。

  また、事実認定部分ほどでもないが、当事者の主張の適示部分がやたらと長い判決も多い。思うに、実務上、主張整理を終える段階で裁判所が双方の主張の整理案を作成して両当事者に示して意見を求める運用があるが、そうすると当事者(弁護士)としては、(依頼者の希望または依頼者に対するアピールもあってか)自分の方の主張としてこれも記載してくれ、あれも記載してくれ、もっと詳しく書いてくれとなって、自然と長くなってしまう傾向があるのではないか。このような運用も良し悪しである。