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2014/03/17 親会社の株主による株主代表訴訟・・・多重代表訴訟・・・

弁護士 59期 眞鍋 洋平

1 株主代表訴訟とは

  株主代表訴訟とは,株式会社が役員等の任務懈怠責任等の法的責任を追及する訴えの提起を怠っている場合に,株主が当該株式会社に代わって役員等に対して提起する責任追及等の訴えのことをいいます(会社法847条?853条。以下,会社とは株式会社を指します)。

  株主代表訴訟の制度は,役員間の親密な関係や同僚意識等により会社が役員等の責任を追及できず,会社ひいては株主の利益が害されるおそれがあることから,株主が会社に代わって役員等の責任を追及するための訴訟を提起することを認め,株主の利益の回復を図った制度です(損害回復機能)。このような制度があることにより,役員等は株主の目を意識するようになり,任務懈怠が抑止されるという効果も期待されています(任務懈怠抑止機能)。


2 従来の会社法下での多重代表訴訟の可否

  平成9年に持株会社が解禁されて以降,持株会社の株式だけを上場させ,その子会社たる事業会社の株式は非上場とする企業集団が増えました。このような企業集団において持株会社の株価は事業会社の状況に左右されるのが一般的であるため,持株会社の株主にとって子会社の経営の適正化は重大な関心事と考えられます。しかし,従来の会社法には,親会社の株主が子会社に代わって子会社の役員等の責任を追及する訴訟(多重代表訴訟)を認める規定がなく,その可否については議論がありましたが,一般的には,法が明文で認めた場合(会社の役員等の責任を追及する訴訟係属中に株式移転が行われて当該会社の株主が親会社の株主となった場合。会社法851条1項1号)を除き,否定的に解されていました(東京地裁H19.9.27判決等)。そのため,親会社の株主は,非上場の子会社の役員等に任務懈怠があっても,その責任を直接追及することができず,親会社を通じて子会社の役員等の任務懈怠を間接的に追及するしかありませんでした。


3 会社法改正

  このような状況のもと,会社やその属する企業集団の運営の一層の適正化等を図ることを目的として,平成25年11月29日,多重代表訴訟制度の創設を含む会社法の一部を改正する法律案が国会に提出されました。同法案は,特定秘密保護法案を巡る審議紛糾等もあって同国会では成立せずに継続審査となり,平成26年1月から始まる通常国会に持ち越されましたが,同国会で可決成立となる可能性は十分にあります。改正案における多重代表訴訟制度の骨子は以下の通りです。

(1) 提訴や提訴請求ができる株主

  多重代表訴訟の提起やその前提となる提訴請求(後述(4))ができる株主は,最終完全親会社等(対象となる会社の株式の全部を直接又は間接に有する完全親会社等であって,その完全親会社等がないもの)の株主であり,公開会社(株式の譲渡制限の定めがない会社)にあっては,濫訴防止という観点から,原則6ヶ月前から引き続き議決権比率又は持株比率が1%以上の最終完全親会社等の株主に限られています。

(2) 対象となる子会社の範囲

  会社といっても実質的には一部門を法人化したに過ぎないような場合もあり,そのような場合にまで親会社株主の子会社役員(実質的には部門長)に対する直接責任追及を認める必要は乏しいことから,多重代表訴訟の対象となる子会社の範囲は,役員等の責任の原因となった事実が生じた日において最終完全親会社等及びその完全子会社等における株式の帳簿価格が,当該最終完全親会社の総資産額の20%を超える子会社に限られています。

(3) 最終完全親会社等に損害が生じていない場合等

  子会社の役員等に任務懈怠があっても,これにより最終完全親会社等に損害が生じていない場合や,株主が図利加害目的で提訴しようとしている場合には,多重代表訴訟の提起やその前提となる提訴請求はできません。

(4) 提訴に必要な手続

  (1)の株主は,直ちに多重代表訴訟を提起できるのではなく,まず対象となる子会社に対し,役員等の責任を追及する訴訟の提起を請求する必要があります。(1)の株主は,提訴請求の日から60日以内に当該子会社が訴訟提起しない場合にはじめて,子会社に代わって多重代表訴訟を提起することができます。


4 最後に

  私が知る限り,上場会社の非上場子会社の役員等は,今までも上場会社たる親会社の株主の目も意識しながら経営の適正化に注力してきたように思いますが,多重代表訴訟制度の創設等を契機として,企業経営者はより一層株主代表訴訟のリスクを意識する必要に迫られそうです。