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2024/10/15 転売ヤーはいなくなるか

イベント当日は快晴希望

皆さんは、スポーツや音楽など、各種イベントの観戦・鑑賞はお好きだろうか。ゆったりテレビ派もいると思うが、やはりライブの非日常感はよいもので、私は大好きである。

さて、こうした観戦等では、昔からはチケットの不正転売(転売ヤー)がつきものである。自分が落選したチケットがインターネットで高額に販売されており、悔しい思いをしてきた人も多いであろう。

そんな思いが届いたか、ご承知のとおり、令和元年6月からは、いわゆるチケット不正転売禁止法が施行されている。正確性を無視してざっくりいえば、興行主が「転売は駄目」と明示して販売する座席指定のチケットの不正転売や、不正転売目的の仕入れを禁止する法律である。

同法には罰則も定められ、過去には、某人気グループのチケット転売者が有罪判決を受けている。最近は、その影響もあってか、公に転売する人はかなり減ったように思う。昔は、水●橋駅付近にいくと、決まってオレンジ球団のチケット売却を持ちかけてくる者がいたが、最近はそれも見かけない。

同法との関係では、急な予定でイベントに行けない事態への対処も気になるが、最近は、興行主も公式リセール(売却依頼を出すと、公式サイトを通じて購入者を募り、マッチングすると売却者の指定口座に入金してくれる)を整備していることも多く、上記法律との抵触を懸念することなく、売却も可能である。

ただ、転売防止との関係で完璧かというと、思うところもある。例えば、システム運営上やむを得ないものの、リセール時には概ね購入価格の10%程度が手数料として控除されるので、売却者にとって一定の損は避けられない。売却者によっては、こうした損を嫌って、不正転売へ傾く可能性もある。

また、ややこしいのが、最近増えつつある「ダイナミックプライシング(価格変動制)」との関係である。同制度は、需要者のニーズに応じて、価格を変動するというもので、資本主義そのものの制度である。アコギだと感じる面もあるが、近年は、某ネズミのランドでも採用されており、メジャーともいえよう。ただ、イベントによっては、例えば、公式の販売サイトであるにもかかわらず、販売開始初日は1万円だったものが、イベント直前では2万円以上に跳ね上がっていたりもする。こうなってくると、いわゆる転売ヤーは販売開始時にチケットを大量に仕入れておき、イベント直前で公式価格よりも安く売りつつ、かつ、利益を出しうるなど、ややこしい問題も生じる。また、購入者からすると「公式より安いじゃん」と思って購入したら、実は違反を助長していたなども起こり得る。

チケット不正転売を防止することは容易ではない。個人的には、興行主には、特にダイナミックプライシングについてはよく考えて欲しい次第である。

とはいえ、せっかくイベントに参加するのであれば、その日はそんな野暮なことは一切忘れて、目の前の非日常を楽しむのが吉というものである。