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2022/02/18 長白山

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 新型コロナウイルスの感染拡大は依然として収束の兆しが見えず、懸念されるが、実は、地球温暖化による気候変動や環境破壊の問題も、新型コロナウイルス問題と劣らずに、むしろそれ以上に深刻な問題である。新型コロナウイルスの感染拡大は、いずれは有効なワクチンや薬が開発されかつ集団免疫が実現して、収束するはずである。しかし、地球温暖化による超大型台風・ハリケーンの多発や豪雨による水害、環境の破壊は長期的に続くものであり、いまだ根本的な解決の見通しが立っていない。そして、このままでいけば、長期的には、新型コロナウイルスによる死者数よりも、超大型台風・ハリケーンや豪雨による水害及び環境の破壊による死者数の方が多くなることは確実である(先般アメリカで史上最強の竜巻が発生したことは記憶に新しい)。
 このことは常に意識しておきたいものである。

 そうこう思っていたところへ、今度は、トンガでの海底火山の大噴火が報じられ、巨大火山の大噴火による被害のことを改めて思い出させられた。

 巨大火山の大噴火は、新型コロナウイルスなどよりも、はるかに甚大な被害を人類に与えることは確実である。新型コロナウイルスが原因で、日本の国民が全滅することはないであろうし、日本国が壊滅することもないであろう。

 しかし、巨大火山の大噴火は、ひとたび起これば、日本の国の少なくとも半分を壊滅させることは十分にある。その場合、残った半分も、時間の問題で国として成り立たなくなるであろう。たとえば、約7300年前に、鹿児島の南沖合にある喜界カルデラの巨大噴火による火砕流が海を渡り、九州の南半分の縄文文化圏を壊滅させたことは、わりとよく知られている。同じ規模の巨大噴火が九州や東北地方、北海道の地上の火山で起きたらどうなるか、想像してみてほしい。

 そして、数千年ないし1~2万年のスパンで考えれば、それは必ず起きるのであり、数年後に起きてもおかしくはない。

 日本国内の火山の巨大噴火の可能性とその場合の被害については、しばしば報じられており、知っている人も多いであろうが、長白山の巨大噴火については、あまり知られていないようである。長白山(朝鮮半島側の呼び名は白頭山)は中国と北朝鮮の国境にある巨大火山で、朝鮮民族の聖地とされ、有名観光地となっている。北朝鮮のテレビニュースの時にアナウンサーの背後に湖の写真?が映るが、あれが長白山山頂の火口湖の「天池」である。
 2009年7月に長白山に登ったことがあるが(当然中国側からであり、登ったといっても、整備された道を1時間半ほど歩くだけである)、そこは中朝国境で、国境を示すために、膝丈くらいの杭が打たれてそこにロープが張られているだけであった。山頂の霧が晴れるのを待ちながら歩いていたら、危うく国境をまたぎそうになって、ヒヤッとしたのを覚えている。

 長白山は、約1000年に一度の割合で巨大噴火を繰り返しており、最近では西暦946年に巨大噴火を起こしている。世界中の火山の歴史を調べても、この時の噴火を上回るものは、その後には起きていないとのことであり、この時噴出された火山灰は、日本の北海道と東北地方に5センチメートル以上積もったとのことである。
 今また、長白山がたまっている1000年分以上のマグマを放出して巨大噴火を起こせば、朝鮮半島の北半分(つまり、北朝鮮)と中国の東北部は壊滅的な被害を受けるし、韓国や日本にも大量の火山灰が降り積もって、著しい被害を受けることは確実である。シミュレーションによれば、噴火が冬の場合、火山灰は18時間後に東京へ到達するそうである。そうなったら、電子機器は火山灰を吸い込んで使用不能となる。また、大量の避難民が日本にも押し寄せてくるであろう(以上については、鎌田浩毅『地学のススメ 「日本列島のいま」を知るために』(講談社ブルーバックス)による)。
 まったくもって、対岸の火事ではないのである。そんなとき、国境のどちら側に立っているかの区別は無意味であろう。