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2013/02/15 離婚に伴う給付請求

弁護士 61期 遠藤 直子

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  離婚に伴う財産上の給付としては、財産分与、慰謝料、養育費が挙げられますが、具体的な紛争の中で、どのようにその給付額が決められるのかについて、概観してみたいと思います。


2 財産分与

  財産分与請求権とは、離婚した者の一方が他方に対して財産の分与を求める権利のことで、(1)夫婦が婚姻中に協力して築いた財産の清算、(2)離婚後の経済的弱者に対する扶養料、(3)相手方の有責な行為により離婚を余儀なくされたことについての慰謝料という3つの要素が含まれます。(3)については、財産分与には含めずに、次項で述べるように単独で請求することもできます。

  (1)の清算の対象となる財産は、共有財産(名実ともに夫婦の共有に属する財産)及び実質的共有財産(名義は一方に属するが夫婦が協力して取得した財産)であり、特有財産(名実ともに一方が所有する財産。例えば、一方が相続により取得した財産や婚姻前に貯めていた預貯金等)は原則として分与の対象となりません。清算の割合については、原則として2分の1と考えられており、財産形成、維持への寄与度について特段の事情があれば、2分の1から増減されることになります。

  (2)の扶養的財産分与が認められるためには、請求者に扶養の必要性、被請求者に扶養の能力のあることが前提となります。そして、扶養的財産分与の額は、婚姻期間、有責の有無や程度、夫婦の年収、年齢、子の養育、病気や身体ないし精神障害等を考慮して判断されます。扶養的財産分与が認められた裁判例の多くは、離婚後妻が安定した収入を得るまでの一時的手当としての支払を認めるにとどまっており、長期間にわたる扶養料を認めた例は少数です。

  財産分与請求は、離婚後もすることができますが、2年の除斥期間が定められているため、離婚成立から2年以内に行う必要があります。


3 慰謝料

  離婚に伴う慰謝料とは、離婚によって被る精神的苦痛による損害の賠償であり、離婚原因たる個別の有責行為により生じた精神的苦痛に対する損害賠償と離婚により配偶者の地位を失うことから生じた精神的苦痛に対する損害賠償の双方を含みます。

  既になされた財産分与が慰謝料の要素を含む場合であっても、その金額等において精神的苦痛を慰謝するに足りないと認められるときには、別個に不法行為を理由として慰謝料請求ができます。

  慰謝料請求が認められる例としては、配偶者の不貞行為、暴力、悪意の遺棄(正当な理由なく同居・協力・扶養義務を果たさないこと)等が挙げられます。そして、慰謝料額の算定にあたっては、離婚原因たる個別の有責行為により生じた精神的苦痛と、離婚により配偶者の地位を失うことから生じた精神的苦痛の双方が総合的に斟酌され、具体的には、有責行為の程度・態様、精神的苦痛の程度、婚姻破綻に至る経緯、婚姻生活の実情、当事者の年齢・社会的地位・支払能力、離婚後の生活状況等の個別の事情が考慮されることになります。

  また、結婚していることを知りながら不貞の相手方となった者等の離婚原因を作った第三者に対しても、慰謝料の支払義務が認められます。


4 養育費

  養育費とは、未成熟子が社会人として独立自活できるまでに必要とされる費用のことで、一般的には未成熟子が成年に達する月まで支払うものと定められます。ただし、父母の学歴等の家庭環境や資力により、支払終期を18歳や22歳と定める場合もあります。

  養育費については、裁判官と調査官が中心となって、義務者と権利者の収入額及び子の数によって養育費を算定した養育費算定表が作成されており、調停や裁判となった場合には、この養育費算定表に基づいて養育費が定められることが多いため、特別な事情がなければ、当事者間の任意の話合いにおいても、養育費算定表を基にして支払額を決めることも多くなっています。


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  養育費については、算定表に基づいてある程度の予測が可能ですが、財産分与及び慰謝料については、各事案における個別の事情を踏まえた判断がなされるため、裁判となった場合の認定額を的確に予測することは難しいです。そのため、離婚すること自体の合意はできているものの、離婚に伴う財産給付について合意ができないため、紛争が長期化するというケースが多くあります。