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2022/08/05 高橋氏の訃報に接して思い出す

条文読替の多様はもはやパズル

先般、高橋和希氏の突然の訃報に接した。まだ60歳の若さであった。ご冥福をお祈りするとともに、これを機に、昔の思い出を振り返ることにしたい。

言わずもがなだが,高橋氏は、週刊少年ジャンプで1996年から連載が開始された漫画「遊戯王」の原作者である。世間的には、同漫画のゲームの一つである「遊戯王カード」の方が有名かと思う。

遊戯王カードは、モンスター同士のカードバトルだが、初めて発売されたのは1999年であり、当時小学生であった私もこれに大変熱中した。中学入学と同時ころに熱が冷めた記憶があるが、当時は、暇さえあれば、学校の隅っこや、友人の自宅などで、デュエル(カードのバトル)を繰り広げていた。不思議なもので、カードさえあれば、友人の友人など、見知らぬ者がいても仲良くなれたものである。

ちなみに、当初のルールは、非常に単純明快で、プレイヤーのライフポイントは3000で、自分のモンスターが相手のモンスターの攻撃力を上回ると、プレイヤーのライフポイントが削られ、ライフポイントが0になったら負けだったかと思う(なお、モンスターカード以外にも、魔法とトラップカードがあった)。

もっとも、以下のとおり、遊戯王カードには、根深い問題もあったと思う。

・単純にお金がかかる(1パック5枚入りで150円だった気がする。小学生にとっては十分高額だ)。

・親の方向性により、諸々の制約がかかる(そもそも、中学受験をするようなご家庭は、時間もお金もかかるカードゲームに興じること自体が反対されていただろう)。

・周りを疑いたくはないが、レアカードがなくなるという事態が発生したりする。

・カードの交換などをすると、やっぱり「なかったことにしたい」などの問題が生じる(友人同士で円満に戻せばよいのだが、カードがさらに第三者の下に行っていると、非常に複雑になる。また、ゲームショップで見知らぬ人に交換を持ち掛けられ、嫌な思いをするおことなども。)

・経済格差に伴うカードの戦闘力の差を実感する。

こうしてみると、デメリットも結構あるが、そういった面も含め、小学生の自分にとっては社会勉強になり、今ではよい思い出である。

ところで、当初のルールは、上記のとおり単純なものだが、デュエルをしていると、相手と「解釈」に相違が生じることがあった。

というのも、カードの説明文が非常にシンプルであり、その説明では判然としないという事態が生じるのだ。適当に作った例でいうと、「このカードを使った場合、モンスターを蘇生させることができる」旨の魔法カードがあったとき、「え?蘇生できるモンスターって、自分の死んだモンスターだけ?相手の死んだモンスターもオッケーなの?」といった感じである。

ちなみに、当時から、発売元であるコナミには、電話でのカードルール相談室があり、「どっちが正しいの?」と聞くと、担当者から回答が返ってくる仕組みであった。もちろん、回答が意味不明だったり、回答を踏まえて友人に説明しても、全く納得を得られなかったりなど、機能しなかった記憶であるが。

面白いのが、上記問題の対策と思われるが、次のシリーズが出ると、カードの説明文が若干詳しくなる事象であった。発売元も、小学生などからの真摯な突っ込みを受けて、改良していたのだろう。

ただ、過ぎたるは及ばざるがごとしというか、段々と説明文が長くなりすぎて、かえって意味が分かりづらくなる傾向にあったように思う。なお、ネットで拾うと、今では以下のようなカードの説明文もあるようだ。

「自分のターンのメインフェイズ時、自分フィールド上に「BF-疾風のゲイル」以外の「BF」と名のついたモンスターが存在する場合、このカードはチェーンブロックを作らずに手札から特殊召喚することができる。発動効果:1ターンに1度、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を対象に取って発動することができる。:そのモンスターの攻撃力と守備力を半分にする。半分にする数値はもともとの攻撃力と守備力ではなく、甲か処理に現在の攻撃力と守備力の数値を参照する。この効果は、このカードがフィールド上に存在しなくなった場合でも継続して適用される。この効果によって変動した攻撃力と守備力はエンドフェイズでリセットされず、次のターン以降も変動値の適用は継続される。また、選択したモンスター1体を次のターン以降に再び対象にとって効果を適用する・・・以下、略(長すぎる)」

・・・全く読む気にならない。今の小学生(大きなお友達もいるかもしれないが)は本当にこれについていけているのか。

さて、そんなことを考えていると、この現象は今でもよく遭遇する事象であることに気づく。

そう、法令改正とまったく同じ流れなのである。つまり、当初作ったものは、非常にすっきりしていたのだが、時代が流れることによって、立法者が「細かく書いたほうがよくない?」として、結果的に、一読してもよくわからん法令になるという、会社法・金商法をはじめとした、経済法令にありがちなそれである。

考えてみれば、根底にあるのは、紛争がおこったときの解釈指針という点では、遊戯王カードも法令も同じなのである(違うか?)。 こうしてみると、小学生の時点で、知らず知らずに遊戯王カードにより法曹の素養を磨いていたのかもしれない(違うか??)。