弁護士法人 小野総合法律事務所 ONO SOGO LEGAL PROFESSION CORPORATION

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2018/07/16 IT化の条件

抵抗勢力予備軍

  私は、これまで、いわゆる3大キャリアのうちの1社と契約してアイフォンを利用していたのですが、料金が割高に感じていました。そんな折、自宅で利用しているケーブルテレビの運営会社が、ケーブルテレビの顧客向けにスマートフォンのサービスも提供していることを知り、その会社に契約先を切り替えることにしました。

  具体的には、現在利用しているアイフォンと電話番号はそのままに、アイフォン内のSIMカードをケーブルテレビの会社のものと交換したのですが、その一連の手続の中で思い知らされたのが、自分のITリテラシーの低さです。

  例えば、ケーブルテレビの会社と契約する際に、データ通信量ごとに料金が異なりますが、「データ通信量」が何なのか分からない(アイフォンを最初に契約した際にも、データ通信量で料金を選択したのかもしれませんが、そんな昔のことは覚えていません。)。これまで使用していたメールアドレスが使えなくなることとの関係で、これまで使っていたアイフォンの「メッセージ」と、いわゆるショートメールの違いが分からない。家族と無料で通信するために、LINEをダウンロードして使えるようになるのに四苦八苦する。

  一番驚いたのは、アイフォンを利用する際のID登録を確認していたところ、アップルのクラウドサービスに、いつの間にか、自分のアイフォン内のデータをアップロードしていたことに気付いたことです。もちろん、よく分からないまま自分で操作した結果なのですが、IT機器を利用する上で、いかに「自分が何をしているのか分からない」状態となってしまうかを痛感させられました。





  さて、平成30年3月30日、政府の「裁判手続等のIT化検討会」から、「裁判手続等のIT化に向けた取りまとめ」が公表されました。

  これは、諸外国と比較してもIT化が遅れているといわれる我が国の民事裁判手続について、裁判書類の電子情報によるオンライン提出(e提出)、裁判所が管理する事件記録や事件情報の電子化(e事件管理)、裁判期日におけるテレビ会議やウェブ会議の活用の大幅拡大(e法廷)という「3つのe」の観点から、IT化の実現を図っていくべきであるという提言です。

  確かに、世間のIT化の進行と比べると、民事裁判の旧態依然とした実態はお寒い限りであり、紙媒体の偏重に象徴されるその強烈なアナログぶりは、普段裁判所に出入りしている我々弁護士にも、現代社会との隔絶を強く感じさせます。

  このままでは、民事裁判は、早晩、制度インフラとしての利便性や有用性に見切りをつけられ、世間から見放されてしまいかねない状況であり、そのような中、IT化を図るべきであるという提言の基本的姿勢には、何ら異論のないところであろうと思われます。





  しかし、私個人に関していうと、スマートフォンの一件以来、民事裁判のIT化が必要だなどと考えるのも、実は、そのIT化に自分が弁護士として対応できることを前提としているのではないか、と感じるようになってきました。

  政府の提言がいうように、将来、民事裁判の全面的なペーパーレス化が実現された場合、自分がその変化についていけるかを想像すると、今となっては心もとない限りです。アイフォン内の写真を知らない間にクラウドにアップロードしてしまうならまだしも、弁護士業務の中で、相手方に見せるべきでない文書を誤って裁判所のシステムにアップロードし、相手方が閲覧できる状態にしてしまえば、それは紛れもない弁護過誤となるはずです。

  弁護士業務では、「自分が何をしているのか分からない」状態など許されないことは当然であり、今後ますます年齢を重ね、IT面での対応能力が低くなっていく自分が、民事裁判のIT化の実現段階になって、それにもろ手を挙げて賛成するだろうかという疑問や不安は否めません。

  とりあえずは、自分のスマートフォンの利用方法を理解することに努めようと思います。